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2021年1月3日日曜日

Yahoo! ニュース個人に書いた変異ウイルスの記事の紹介

 本日は曇天、朝は霧のかかっていたベセスダです。
 1月2日初出勤、大きめの実験をしております…がんばります。


Fig.1 本日の研究所構内


 さて、Yahoo! ニュース個人に、今話題の新型コロナウイルス SARS-CoV-2 の、変異リニエージ B.1.1.7 についての記事を先週寄稿しております。




 先週の時点での情報をまとめてありますが、その後の情報更新も速く、公的なところを含め多くの情報があふれております。一度基本的なところを確認するのにお使いいただけるかと思いますので、お読みいただければ幸いです。

 変異ウイルスについては、夏ごろには D614G というものが騒がれ、生物学的・ウイルス学的実証によっても感染しやすくなることや、ウイルス産生が増えることなどが示されてきましたが、その後、ヒト集団では特には大きく感染性や感染拡大に対して変異は寄与していないであろうという論文も出てきました。

 今回の変異がどのぐらいヒト集団内でのウイルス伝播に影響を与えるのかは正直まだよくわからないと言ってよいと思います。もちろん警戒するにこしたことはありませんが、個人レベルでの対処法・予防法は変わりません。

 しっかりと、3密を避け、換気をし、マスクをし、距離をとり、手を洗い、体調を整えて、体調不良なら勤務などの外出はせず早めに受診、お互い守りあって生活をたんたんといたしましょう。基本の予防策が最も大事です。

 
 Yahoo! ニュース個人にもまた続編を書こうかと思っていますが、もう少し情報が出そろってからにしようと考えています。今のところ、変異の影響はちょっと引いてみています。イギリスの理論疫学者や、そのほかの専門家は結構前のめりになって変異について騒いでいますが、ちょっと引いて、落ち着いて。




 



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2020年6月17日水曜日

「消毒薬」の「空間噴霧」について

 新型コロナウイルス SARS-CoV-2 の世界的な流行が続いています。

 日本でもまだ新規感染者が毎日出続けている状況であり、流行の火種は残っていますし、海外から流入してくることは当然ありえますので、日常生活では予防の継続が必要であり、まさに専門家会議のいう「新しい生活様式」を継続することが重要ですね。

 「新しい生活様式」、すなわち予防をしながら生活する、ということ以上にする必要があることは個々人のレベルではないですね。

 ここのところそれでもかなりトンチキなことを言ったりやったりする人がたくさんいます(トンデモや陰謀論などまで含めると猛烈にたくさんいます)。
 
 気になっているのは、未だに PCR などの検査を広く国民全体に行うべき、などという思考停止ともいえるような暴論を WHO事務局長上級顧問の肩書きをもつ人や、医療ガバなんとかの医師が言っていたりすること。これについては、いずれまた触れたいと思います。
 
 もう一つは、今回の記事のテーマである、「空間噴霧」です。

 (空間除菌については以前にも触れています)



消毒薬の空間噴霧



 ここで取り上げる「消毒薬の空間噴霧」とは、

 ● 新型コロナウイルス SARS-CoV-2 対策として、
 ● 次亜塩素酸水・次亜塩素酸ナトリウム水溶液その他の化学物質を
 ● 加湿器や噴霧器のような機械を用いて、
 ● ミスト状にして空間に噴霧する

 行為を指しています。ここが基本なので大事ですね。

 さて、何が問題、結論であるか、これを先に述べておきます。
 ● 「消毒薬」をミスト状にして空間に噴霧することの
  安全性は確認されていない
 ● 「消毒薬」をミスト状にして空間に噴霧することでの
  新型コロナウイルスSARS-CoV-2 の感染対策としての
  有効性は確認されていない
 ● よって、これらの検証がなされ、どちらもが確認されるまでは
  「消毒薬の空間噴霧」は行ってはいけない
 というシンプルな話です。


 さて、店舗や施設において、モクモクと空間にミスト状とした「化学物質」を噴霧している光景がよく見られるようです。
 
 主に用いられているのは次亜塩素酸水や亜塩素酸水のようですが、様々なタイプの「化学物質」を噴霧しています。ただ、水も化学物質でありますが、この場合にはただの加湿器ですね。

 さて、空間噴霧に触れるまでに、消毒薬について考えたいと思います。
 消毒薬ってそもそも何のために、どうやって使うものなのでしょうか。



消毒薬について



 消毒薬とは読んで字のごとく、消毒するための薬のことです。

 消毒というのは定義づけすると大変なのですが、簡単には、病原体(細菌やウイルス)の感染性を失われること、と考えていただければいいですね。

 健栄製薬さんのこのページがとても詳しく参考になります。


 消毒薬というのは代表的なものとしては、アルコール(エタノールなど)、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(塩素系漂白剤として有名)があげられますが、こういった消毒薬を効果的に効かせるためには以下のことが大事になります。

 ● 濃度
 ● 時間
 ● 温度
 ● 作用のさせ方(しっかり漬け込む、塗布する、清拭するなど)

これはどれも重要なファクターで、ただしい濃度で、しっかりと時間をかけて、温度も適切に作用させることが必要なんですね。
 これに加えて、

 ● 適用可能な部位や素材
 ● 消毒の対象となる病原体の種類

これもとても重要になります。
 特に人体に関しては、健栄製薬さんのページにあるように

消毒薬は抗生物質に比べ、抗菌スペクトルが広く、かつ殺菌力も強い。これは、裏を返せば、消毒薬は抗生物質よりも、毒性が高いといえる。したがって、消毒薬の人体への適用では、細心の注意を払いたい

 ということになります。
 病原体の種類も非常に重要ですが、新型コロナウイルス SARS-CoV-2 はエンベロープのあるRNAウイルスである、ということは大事ですね。

 さて実際の使用例としては、例えば、アルコールで手を消毒する際には、70-85%vol のエタノール製剤で、手をしっかりと浸し、20秒程度かけて丁寧に全体に塗り込むこと、が必要になりますが、

これは
 ● 70-85% という濃度
 ● 20秒程度 という時間
 ● 室温~体温程度という温度
 ● すり込むという作用のさせ方
これらで、
 ● 人体の皮膚という部位・素材に
 ● 新型コロナウイルスSARS-CoV-2対策として
作用をさせている、といえる訳ですね。

 消毒薬についてはこのようにそれぞれの条件をしっかりと確認してどういう使い方が安全で効果的であるか、がわかっている物がおおく、正しく使うことが重要なのですね。




新型コロナウイルス SARS-CoV-2 対策としての消毒薬



 新型コロナウイルス SARS-CoV-2 は主に二つの感染ルートを介して感染します。




それは、
 ● 飛沫感染ルート
 ● 接触感染ルート
の二つです。

 飛沫感染ルートとは、感染者の作り出した「しぶき」= 飛沫 が、直接他の人に吸い込まれたり目などの粘膜に付着することでウイルスが伝播してくる経路のことで、くしゃみ、咳、会話などの際に主に問題になります。

 このルートからの感染を防ぐ方法としては、距離をとること、人混みへ行かないこと(三密を避ける)、換気をすること、そしてマスクやゴーグル、フェイスシールドを適切に用いること になってきますね。

 この飛沫感染ルートに関しては消毒薬の介在する余地はありません
 
 くしゃみしてしまえば1秒以内に飛沫は相手のところまで飛び、消毒薬をこのわずかな瞬間に作用させることはほぼ不可能であるというのがまずは大事ですね。
 そして、空間をある程度の時間漂ってから吸入する場合でも、十分な濃度・時間・作用のさせ方でこういった飛沫や乾燥した飛沫核(=エアロゾルともいいます)中のウイルスを不活化させる効果があることは全く証明されていないのですね。

 よって、繰り返しになりますが、飛沫感染ルートに関しては消毒薬の介在する余地はありません


 さてそうしますともう一つのルートが大事になります。
 それが接触感染ルートになります。
 接触感染ルートとは、汚染された手やモノを触れることで、自分の手が汚染され、その汚染された手で自分の口・鼻・目などの粘膜を触れることでウイルスが伝播してくるルートのことになります。

 このルートからの感染を防ぐ方法としては、手をよく洗うこと、洗えない場合には手を消毒すること、環境を消毒すること、になります。そう、ここで消毒薬の活躍の場がでてくるわけですね。
 一番大切なことは、ただし、消毒ではありません。
 手を洗うことです。手を介在してきますので、とにかく手を洗ってしまえばルートを断つことができるのが、第一義ですね。

 さて、しかしながら、消毒も正しく行えば有効です。
 手指消毒と環境消毒に分けて考えましょう。

 手指消毒は、人体の皮膚という手指に適用でき、新型コロナウイルスSARS-CoV-2に効果が確認されている消毒薬を、適切に(上に述べた条件などを満たして)用いることが大事です。繰り返しますが、例えば、アルコールで手を消毒する際には、70-85%vol のエタノール製剤で、手をしっかりと浸し、20秒程度かけて丁寧に全体に塗り込むこと、などですね。

 環境消毒は、とくに不特定多数の人がよく触れる表面、について、行うことが推奨されます。ドアノブ、共有の取っ手や手すり、共有パソコンの入力器具、ATMのタッチパネルのようなもの、などなどですね。
 適用はプラスチックや金属であることが多いでしょうけれども、十分に効果的に行うには例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を200ppm程度に薄めた液体で、ドアノブなどをしっかりと拭く、こういった使い方になりますね。これはしっかり浸すことで消毒し、拭き取ることで物理的にも残骸物を除去し、かつ消毒薬が対象物に作用しすぎないようにすることも意図しますね。

 さて、新型コロナウイルス SARS-CoV-2 の主に二つの感染ルートについて述べてきました。空間噴霧はどちらのルートに作用させることを目的にしており、どちらについて有効なのでしょうか

 答えから言うと、消毒薬の空間噴霧による有効性はどちらのルートにも確認されていません

 ではどういった消毒法が推奨されるのか。
 端的には、

 ● 手指消毒 については、アルコール製剤でしっかりすり込んで消毒
 ● 環境消毒 については、アルコール製剤、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、
  中性洗剤で、しっかりと清拭する。

 になります。
 これ以外の消毒法も消毒薬も基本は必要ありません。これらが適切な使用であれば確実で安全といえるものであり、十分安価であり、市販されているからです。




安全性の問題



 消毒薬の安全性は、かならず問題になります。 
 病原体の機能を奪うことのできる化学物質なわけですから、人体にもなんらかの作用をすることは当然なんですね。

 なので、これは安全性のよく確認されているものを、安全で妥当な濃度・方法で人体に適用することが非常に重要ということになります。

 手指などの場合には、皮膚には比較的厚い角質層がありますが、アルコールであっても過敏症をおこす方がいるように、個人差というのも多くありますし、消毒薬が強ければ当然ながらやけどやただれを生じる可能性もあります。

 目や口、肺までの気道などは粘膜でおおわれていますが、これは角質層がなく非常に弱い組織です。そのようなところでは消毒薬での障害もうけやすくなります。

 とくに吸入する場合には化学性肺炎を引き起こす可能性などもあるわけで、安全性が十分に確認された方法で、正しい適用をすることが重要です。






公的な推奨はどうなっているか




In indoor spaces, routine application of disinfectants to environmental surfaces via spraying or fogging
(also known as fumigation or misting) is not recommended. 

 屋内での消毒薬の環境表面へのスプレーや噴霧は推奨しない、としています。

Do not perform disinfectant fogging for routine purposes in patient-care areas.

として、消毒薬の空間噴霧は患者のいる場所においてはルーチンでは行わないこと、としています。


Unless the pesticide product label specifically includes disinfection directions for fogging, fumigation, or wide-area or electrostatic spraying, EPA does not recommend using these methods to apply disinfectants

端的には勧めないとしていますね。

 というか、そもそも空間除菌や空間噴霧を推奨している公的機関はないと思われます。

 ※追記
 「5. (補論)空間噴霧について」の項目において「これらの国際的な知見に基づき、厚生労働省では、消毒剤や、その他ウイルスの量を減少させる物質について、人の眼や皮膚に付着したり、吸い込むおそれのある場所での空間噴霧をおすすめしていません」としています。


次亜塩素酸水を巡る動き



 こんな記事が NHK から出ています。

 
 バズフィードには空間噴霧に関連した記事が出ています



 これらは「次亜塩素酸水」の空間噴霧に関するものですが、「次亜塩素酸水」「電解水」などについてはどうなのかということを見たいと思います。

 これについては、簡単で、
 ● 空間噴霧をした場合の安全性は確認されていない
 ● 空間噴霧での新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染予防効果は確認されていない

が結論になります。
 殺菌力のある消毒薬であることなどは事実で、厚労省にも資料がありますし、食品などの殺菌目的では広く使用されている次亜塩素酸水ですが、繰り返しますが、

 ● 空間噴霧をした場合の安全性は確認されていない
 ● 空間噴霧での新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染予防効果は確認されていない

のです。
 製品評価技術基盤機構(NITE)他の機関が次亜塩素酸水の新型コロナウイルスSARS-CoV-2に対する効果を検討しています(NHKのニュース)が、いずれも次亜塩素酸水にしっかりと浸した場合などの検討であり、「空間噴霧」による上記2ルートでの感染抑制効果は一切評価されていません

 また安全性についても空間噴霧については十分な評価はされていない状況ですね。

 ※追記
 その後、2020年6月26日、厚労省・経産省・消費者庁が合同で発表を行いました。
 経産省のページに詳細は載っていますが、次亜塩素酸水に関する使用法や注意事項がしっかりとまとめられています。





結局、空間噴霧とはなんなのか



 現時点では無意味であり有害な可能性もある方法であり、どこの素人のチープな発想がこれだけひろがったのであるかよくわかりませんが、一切考慮する必要のない行為です。感染症予防上は無意味です。

 行っている店舗や施設、推奨している人が、非常に低いリテラシーでまともではないことを識別するにはいいでしょう(これは首からかけるタイプの「空間除菌」製品がバカ発見器であるのと同様ですね)。
 
 多くの業者がうごめいています。

 「危険であるという証拠はない」「効果がないという証拠はない」などとかみついてきます。今朝もこんなメッセージが来ていました。

「次亜塩素酸水、反対するのはいいけど実験をして検証しなさい。頭の中の想像で社会に持論を展開するな、このエゴ医者。本当に次亜塩素酸水が体によくないという証拠を出せ。頭の中のエゴ論で有名になるな。発表するなら考えではなく世の中のために本当に真実を出しなさい。」

非常に愚かでため息が出ますね。何か行為をしようとする場合、何かをアーギュメントする場合には、まずそれを行う側が根拠を示していかねばなりません

 特に、景品表示法や薬機法は、消費者を守ることを立法趣旨としている面があることは明らかで、害が及ぶ可能性のあることや、優良性に関する事項は販売する業者側の立証がなければこれをうたうことはできないのです。


 

やるべきこととやってはいけないこと



 さて、簡単に見てきましたが、最後に新型コロナウイルス SARS-CoV-2 対策としてやるべきこととやってはいけないことをまとめておきます。


やりましょう


 ● 原則論
 ・十分な睡眠と栄養をとり規則正しい生活をする
 ・体調不良なら休む
  
 ● 飛沫感染対策
 ・3密を避ける、距離をとれるところではとる
 ・マスク・フェイスシールドをする
 ・咳エチケットを守る
 ・換気をする

 ● 接触感染対策
 ・手をしっかりあらう(無理なばあいの消毒を考慮)
 ・不特定多数の人が頻繁に触れる部分の消毒を考慮する
 ・消毒するなら、
  アルコール、次亜塩素酸ナトリウム液、中性洗剤で十分!

 ● 情報の取り方
 ・公的な情報源を中心に、複数の情報源をクロスチェックして
 ・特に推奨される行為については公的な情報の確認を
 
  とにかく基本をしっかりおこない予防していくという
  新しい生活様式、をたんたんと根気よく行うこと。


やめましょう


 ● 無駄な行為
 ・空間除菌、空間噴霧、買ってきた物などすべての消毒など
  
 ● 差別
 ・感染したヒトは悪くありません、
 ・医療従事者差別などもいけません。

 ● 情報過多になること、煽られること
 ・SNS や野良ブログ、業者の言い分などはまともに聞かない
 ・テレビのワイドショーなどを見ない
 ・国民全員検査などのトンデモ情報を相手にしない
 ・推奨されていない「余計なこと」でプラスアルファを狙わない
  → これは「心の隙間」お埋めしようという悪徳業者につけ込まれます

 基本を蔑ろにしないこと。煽られないこと。
 余計なことをしないこと。



 やってはいけない、ことをやることは実害になることがあるだけでなく、過剰な心配などで心身を消耗したり(ノイローゼになる方もいますよね)、まともなことが何であるかという判断をする能力(リテラシーですね)を毀損したりし、本当に実害のみならず、幅広く有害です。基本に立ち返り、ものごとを行っていきたいですね。




まとめ



 結論はもう文中でのべてあります。繰り返しになりますが、

 ● 「消毒薬」をミスト状にして空間に噴霧することの
  安全性は確認されていない
 ● 「消毒薬」をミスト状にして空間に噴霧することでの
  新型コロナウイルスSARS-CoV-2 の感染対策としての
  有効性は確認されていない
 ● よって、これらの検証がなされ、どちらもが確認されるまでは
  「消毒薬の空間噴霧」は行ってはいけない


 店舗や施設で行っている方はやめましょう。
 そういったところを見かけたらやめるようにぜひ伝えましょう。
 根拠なくこれらを推してくるような人は業者などでしょうから、遮断して距離を取りましょう。

 安全で確実な基本的なことをたんたんと行っていくことが何より重要です。




関連情報



 ● COVID-19 情報ページ … リンク集として情報ページを作っています


    







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2020年5月27日水曜日

インタビューをしていただきました

 今日も快晴、夏のような陽気のベセスダです。
 ちょっとお散歩に行き、デスクワークをし、今日はのんびり。


Fig.1 夏のような陽気

 さて、ご縁があって、日経ビジネスにインタビューをしていただきました。

 テーマを絞って取材されることはあったのですが、新型コロナウイルスについて、ざっくばらんにいろいろとお話させていただいたロングインタビューは初めてです。

 新型コロナウイルスについてはわかっていることとわかっていないこと、検討されていることと手が回っていないこと、そこら辺の見極めが結構リアルタイムで必要で、常に情報を探していますが、やはりダイナミックに動きますね。編集者の方ともそういった現状の話などもあっちいったりこっちいったり話したのですが、本当にうまくまとめていただいており感謝です。

 今回は、前編、また後編もあります。


 さて、数日前にこのブログに書きましたが、新しい Virus の本にはまっています。いや、これがまた面白いんです。本当に Viral Infections of Humans 。シンプルな記載なんですが、本当に重要なことがいっぱい書いてある。これはウイルス学者必携ですよね…Fields だけじゃだめだわ…と思ったり。
 ま、専門家を目指す人向けであることは間違いありません。

 ツイッターではしょっちゅうお勧めしているんですが、一般の方向けのウイルスに関する本でのお勧めは、ウイルスは悪者か―お侍先生のウイルス学講義、これ一択。本当によい本だなぁ…って思っています。

 このブログも含め、アップデートしたり書かねばなぁという記事・原稿もたくさんあるのですが、どうも気力が…在宅ワークモードでこう、今ひとつわかずサボっています…。本業の文書仕事などだけしている感じ。ちょっとメリハリをつけないとな、と思ったり。

 


 


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2020年5月6日水曜日

新型コロナウイルス関係の新しいブログを作ってみました

 昨日ふと思いついて、新しいブログを作ってみました。

 というか前々から構想していたものの、作業時間が全く取れなかったのでようやく着手。ブログありすぎだろう、既存のもののメンテもままなっていないのにという意見は…当然なんですが、このメインブログは引き続きこんな感じでだらだらと続けます。

 さて、新しくつくったブログは、新型コロナウイルス SARS-CoV-2 とCOVID-19に関係する情報を集めるだけのブログです。ただ情報源を端的に紹介したいという意図です。探すの面倒ですしね、いろんな情報。広告など入れる予定なし。ただの情報提供(よって意見主張や提言などはしません。できるだけリンクなどを充実させたいのです)。

 というわけでご紹介(まだ作成途上なのですかっすかです)






 サブメインブログとしてもっている(アクセスはほぼない)ばぶばぶろぐのサブドメインを使って作成しました。
 まずは当分は大々的に発表せず、このブログでこっそり宣伝しつつ、充実を図りたいと思います。

 
● 関連記事
 ▶ 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2(2019-nCoV))による COVID-19 について
 ▶ 飛沫感染と空気感染(飛沫核感染)の違いについて





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2020年4月26日日曜日

Yahoo!ニュース個人に記事を書きました

 Yahoo!ニュース個人に記事を書きました。
 ちょっと新型コロナウイルスにに関して。



 ▶ どんなウイルスで、どのように感染するのか? 新型コロナウイルスのそもそも論

 新型コロナウイルス SARS-CoV-2 について、基礎からわかってもらうことを目的として簡単に書きましたので、お読み頂ければ幸いです。
 連載というかたちで少し新型コロナウイルス SARS-CoV-2 とそれによって引き起こされる疾患 COVID-19 について簡単に書いていきたいと思っています。

 まぁこのブログの方の更新が全くできていないので、ブログも更新せねばなとは思っておりますが…。

 
● 関連記事
 ▶ 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2(2019-nCoV))による COVID-19 について
 ▶ 飛沫感染と空気感染(飛沫核感染)の違いについて





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2020年2月7日金曜日

飛沫感染と空気感染(飛沫核感染)の違いについて

 今、新型コロナウイルス SARS-CoV-2(2019-nCoV) の流行が問題になっていますが、感染経路に関する話で、よく「飛沫感染」や「空気感染」といった言葉、「接触感染」などといった言葉が言われていると思います。

 いくつか質問を受けましたので、今回は飛沫感染と空気感染(飛沫核感染)の違いについて簡単にまとめておきたいと思います。

 感染様式というのは英語では mode of transmission と言われますので興味のある方は、こういった単語で検索してみるといろいろと調べられると思います。



飛沫感染と空気感染(飛沫核感染)の違い



 感染症を引き起こす微生物(病原性微生物)には、細菌、真菌、ウイルス、リケッチア、マイコプラズマ、寄生虫などなどがありますが、風邪や上気道炎、肺炎(下気道感染症)は感染している人や動物などが吐き出した飛沫を吸い込んだり、手についた病原体が口や鼻から入り込んだりすることで感染します。

 時にエアロゾルといって、液体が霧のようになったものを吸い込むことでも感染し、加湿器や浴場などの水が感染の原因になることもあります。


飛沫とは


 さて、咳やくしゃみなどをすると、飛沫が飛び散ります。飛沫とは、ようは「しぶき」ですが、水分を含んだ分泌物で、唾液・鼻水・痰などが飛び散るのですね。

 飛沫というのは水分がもちろん含まれていますが、それ以外の分泌物や細菌やウイルスが混ざっています。そして、はじめに飛び散った水分が入った状態のしぶきを、とくに飛沫と呼びます

 くしゃみ一回で個数にして 約40,000個ともいわれる飛沫が飛び散ります。また、咳をしたり、5分間おしゃべりをすることで 約 3,000個の飛沫が飛び出すとされていますが、これには幅がありあくまでも目安ではあります。

 多くの風邪やインフルエンザなどはこの飛沫で感染するため、飛沫感染をする、と言います。英語ではこの経路を droplet-borne route と呼びますね。

 これを起こすものとしては、インフルエンザ、風邪、マイコプラズマ、風疹、百日咳、おたふくかぜ…などなどがあげられます。

 この、飛沫というものは、大きさは 5µm 以上で、比較的すぐに落下していくという特徴があります。そのため約 1~2 m の範囲で人に感染が起こることが多いとされています。

 よって、よく用いられる「濃厚接触」という言葉は、明確な定義はないものの、およそ2m以内に長い間一緒にいた場合や医療従事者などをさすことが多いですね。

 また、今回の新型コロナウイルスも飛沫感染がメインのルートだろうと考えられています。



飛沫核とは


 一方、「空気感染」というものを聞いたことがある人もいるかと思います。
 これは別の呼び方があり、飛沫核感染とも呼ばれます

 飛沫核というのは、先ほど説明した飛沫の、水分が蒸発したあとに残る部分の小さな粒子をさします。この中にある種の細菌やウイルスが入っていると、感染を起こすことがあり、それが空気感染(飛沫核感染)というものです。英語ではこの経路を airborne route と言います。

 飛沫核は、大きさは 5µm 未満で、比較的長い間空間をさまよい、遠くまで飛んでいくことも知られています。2 mを超えるような距離でも感染することがあるため、同一の電車の車内などにのると感染するような場合もあるんですね。

 空気感染(飛沫核感染)はそういうわけで飛沫感染より広がりやすいのですが、水分が失われた状態でも感染性をたもつ限られた病原体だけが起こすことが知られています。
 空気感染(飛沫核感染)を引き起こす病原体としては、麻疹(はしか)、結核、水痘(水疱瘡)があるのです。
 

J. Wei, Y. Li / American Journal of Infection Control 44 (2016) S102-S108 より



その他の感染経路


 そのほかの感染経路としては接触感染と経口感染(特に糞口感染)、媒介物感染があげられます。

 接触感染は皮膚や粘膜に直接、病原体のついたものが触れることで感染するもので、インフルエンザや風邪でも起こりますし、伝染性膿痂疹(とびひ)、咽頭結膜熱(プール熱)、梅毒、淋病なども有名です。英語ではこの経路を fomite route と言ったりします。

 経口感染は手などから食べ物などを介したり汚染された手で口をさわるなどするとおこるもので、ロタウイルスやノロウイルスなどが特に有名です(これはときに次に紹介する媒介物感染に含まれて考えられます)。

 媒介物感染というのは英語では common vehicle transmission と vector borne transmission という風に分けて考えることがおおいのですが、汚染された水、食べ物、血液や、昆虫などを介して感染するもので、コレラ、肝炎、マラリア、ジカ熱、SFTS などがあります。



それぞれの予防法・対策



 飛沫感染を防ぐ方法の一つとしては(サージカル)マスクの着用が挙げられます。大事なことは、感染者側がマスクをすることで飛沫を飛び散らせないようにすることです。そしてまた、感染者と距離を置くこと、患者などであれば個室管理が重要になります。

 空気感染の予防法は、飛沫核を防ぐことになりますが、これは通常のマスクでは対応できません。そこで、N95マスクなどの特殊なマスクを用いることが必要になります。その他の対策としては、陰圧室といって部屋の気圧が低い部屋に患者を収容したり、HEPAフィルターなどの高機能のフィルターで空気を清浄するなど空気予防策と呼ばれる対応が用いられます。



参考になるサイトなど



 ▶ 感染症とは AMR
 ▶ 標準予防策と感染経路別予防策 AMR
 ▶ 飛沫感染予防策としてのサージカルマスク BD
 ▶ Airborne spread of infectious agents in the indoor environment


まとめ



 このように感染症は必ず感染経路があります。
 それぞれの病原体がどのような感染経路をとるかを理解し、それに対して適切な予防策をとることがとても重要になりますね。





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2020年1月7日火曜日

【書籍紹介】EBウイルス 改訂第3版

 超マニアックな書籍の紹介です…紹介してどうするのか…そこは不明です。






 この本は、たった一つのウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス(Epstein-Barr virus; EBV) についてかかれた本です。このウイルスに的を絞った本としては、和書としてはこの一冊(前の版はありますが)しかないように思います。

 EBV は多くの成人(人口の9割以上)がすでに感染しているウイルスであり、がんを引き起こすことなどが問題となるウイルスです。ウイルスの種類としてはヒトヘルペスウイルス属に含まれているもので、human herpesvirus 4(HHV-4) というのが正式な略称にはなりますが、慣用的に発見者二人の名前をとって名付けられたまま通称になっています。

 この本は、日本の EBV 研究者が集まって執筆している本であり、このウイルスについての基礎研究的な部分と、臨床に関する部分とに分かれて書かれています。
 
 内容は、EBVに関わる臨床病態の章と、基礎研究的な部分としてEBVのウイルス学についてがまとまっています。

 決して読みやすい本ではありませんが、EBVに関わる臨床をされている先生や、基礎医学的な興味としてEBVに関心のある方にはお勧めしたい一冊です。

 



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2019年7月11日木曜日

水痘(水疱瘡)・帯状疱疹とそのワクチンについて

 水痘(すいとう、水疱瘡; みずぼうそう Variola)と帯状疱疹(たいじょうほうしん Varicella)が少し話題になっています。これらの病気について、ワクチンも含めて少し簡単にまとめてみたいと思います。

「水痘」の画像検索結果


水痘・帯状疱疹とは


 水痘・帯状疱疹は、ヘルペスウイルスの一種である 水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus;VZV)によって引き起こされます
 ヘルペスウイルスといえば、くちびるにぷちぷちができる単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1) が有名ですが、ヒトに感染するものは 9種類が知られており、そのうちの HHV-3 (3番目)がこの VZV というものなのですね。

 ヘルペスウイルス属のウイルスはいずれも、一度感染すると、潜伏感染といってヒトの一生のあいだ、体の中に潜んでひっそりと感染しているという性質があります。
 VZVもヒトの体に一生潜伏感染をするウイルスなのですね。

 水痘は VZV に初めて感染した際に生じる急性の感染症で、全身にぷつぷつとした皮疹ができることで有名ですね。

 帯状疱疹というのは、一度感染した VZV は体の中に潜んでいるわけですが、免疫の状態が乱れたりすると、再活性化といって体の中でウイルスがまた増えだして、体の一部の領域に「帯」のように皮疹がでてくる状態です。帯状疱疹はVZVの再活性化による皮疹という事ができますね。

 そもそも水痘は、1875年にスタイナーによって、水痘でできた疱疹の内容物を他の人に接種するとうつることが示され(今では許されない実験ですね)、1888年にはフォン・ボケイが帯状疱疹の患者と接触すると、子どもが水痘を発症することを確認されたことでその疾患としての状態がよく知られるようになりました。
 1954年にウイルスが分離・同定されています。
 こちらを参考に ▶ 国立感染症研究所 水痘とは



VZVについて


 
 さて、水痘・帯状疱疹を引き起こす VZV ですが、このウイルスはヒトのみに感染するウイルスです。感染力は強力で、空気感染し、麻疹よりはましなもののムンプスや風疹よりは強いものです。

 VZV は初感染をするとウイルス血症といって、全身にウイルスがひろがって、全身の皮膚に皮疹をつくるのですが、それが免疫力によって抑え込まれると、神経を束ねている神経節という部分に潜り込んでこっそりと潜む潜伏感染状態となります
 一生潜むため、一度感染すると体から排除することは事実上できません。



水痘の潜伏期間、症状、合併症など



 水痘については、VZV に晒されたあと、潜伏期間は10-21日程度で、子どもでは全身の皮疹から症状が始まることが多く、大人では発熱や全身の倦怠感を伴うことも多くなっています。

 水痘では、通常は4-5日程度で皮疹はカサブタとなってきて治癒することになりますが、それまでは強いその水疱の内容物や滲出物に、感染性のあるウイルスがたくさん含まれています。

 合併症としては、肺炎や無菌性髄膜炎・脳炎が稀に起こりえます。



帯状疱疹の症状


 帯状疱疹は加齢やストレス、医原性の免疫機能低下などで生じやすくなりますので、高齢者(といっても50歳以上で急増します)、忙しくストレスの多い生活をしていた時、がんなどを発症したりその治療を受けたとき、免疫抑制剤投与や臓器移植を受けたときなどによく生じます。

「帯状疱疹」の画像検索結果
帯状疱疹の皮疹

そもそも帯状疱疹は、神経節に潜んでいたウイルスが、免疫機能が低下することなどで再活性化して生じる発疹を主体とする疾患で、体幹部(胸や腹)、頭頸部に多く現れます。神経の走行にそって、体の片側のみに現れることが特徴的で、帯のように発疹がでるため、帯状疱疹と呼ばれるのですね。

 ▶ 水痘帯状疱疹ウイルス疾患の病理 IASR Vol. 34 p. 302-303: 2013年10月号 
 ▶ 帯状疱疹.jp
 ▶ 帯状疱疹の原因 帯状疱疹.jp
 ▶ 帯状疱疹 maruho

 帯状疱疹の皮疹は非常に痛みが強いことで有名です。これは、ウイルスが神経に潜んでいてそれが活性化することにもよりますね。

 症状は3-4週間ほど続くことがあり、重症であったりできた部位が眼に近いなど危険性が高い場合は入院加療が必要となる場合があります。

 帯状疱疹の皮疹が治癒した後にもこの痛みは継続することが多くあり、帯状疱疹後神経痛といい、帯状疱疹の合併症としてはもっとも頻度が高く、5-25%程度の人にあることも知られています。
 ▶ 帯状疱疹後神経痛 疼痛.jp
 


水痘と帯状疱疹の診断



 水痘と帯状疱疹は普通は臨床的に診断されます。つまり、目で皮疹をみて、症状から判断されるという事です。

 しかし発疹の性状が典型的でないだとか、たの症状がつよいなどのように非典型的な場合においてはウイルス学的検査が診断につかわれることになります。
 これは、水疱の内容液や血液、ときに脳脊髄液からVZVのDNAを検出して調べる方法です。このほかにVZV抗原を検出する方法もありますがどれを使うかは検査の仕方によります。また、血清学的診断といって抗体の値を測ることもあります。



水痘と帯状疱疹の治療



 水痘と帯状疱疹の治療薬としては抗ウイルス薬がつかわれます。
 核酸アナログといって、ウイルスの増殖を邪魔する薬であるアシクロビル、バラシクロビルおよびファムシクロビルが使用されています。

 さらに、ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬という新しい機序で効く薬、アメナメビルも帯状疱疹に対する治療薬として承認されています



水痘に対するワクチン


 さて、水痘と帯状疱疹の予防はどうすればいいのでしょうか。
 実はワクチンがあるのですね。

 この VZV に対するワクチンは日本発で開発されており、2014年から生後 12-36カ月の児を対象とした定期接種が導入されています
 ▶ 水ぼうそう(水痘)ワクチン こどもとおとなのワクチンサイト

 定期接種化が始まってからは、小児科からの定点報告数は少ない数で移行しており、ワクチンの効果が明確になっています。
 ▶ 水痘・帯状疱疹の動向とワクチン IASR Vol. 39 p129-130: 2018年8月号
 ▶ 水痘の動向 国立感染所研究所
 ▶ 水痘ワクチン定期接種化後の水痘発生動向の変化 
  ~感染症発生動向調査より・第2報~ IASR Vol. 37 p. 116-118: 2016年6月号
 ▶ 水痘ワクチン定期接種化後の水痘発生動向の変化 
  ~感染症発生動向調査より・第3報~


 先に述べたように、VZV に初めて感染することによって生じるのが水痘ですので、はじめて感染する前にワクチンを接種することが大切なのですね。

 しかし、同時に、水痘は保育園・幼稚園で流行りやすく、空気感染もする感染力のつよいウイルス性疾患です。生後12か月まではワクチン接種がされませんので、それまでに感染してしまうことはあり得る、というのが現状でもあります。
 これに対しては、流行している場合には登園を控えるなどの行動をとることが重要となりますね。

 

帯状疱疹に対するワクチン


 
 同じ VZV に対するワクチンではあるのですが、帯状疱疹、つまり VZVの再活性化を防ぐことを目的としてもワクチンが用いられるようになっています。2016年には、乾燥弱毒生水痘ワクチンの効能・効果に「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」が追加され、2018年3月にはサブユニットワクチンというものが承認されています。
 ▶ 水痘・帯状疱疹の動向とワクチン IASR Vol. 39 p129-130: 2018年8月号

 VZV にかつて感染し、ウイルスが潜伏感染をしている場合にのみ帯状疱疹は発症するのですが、じつは感染した人もときどき水痘の子どもなどからウイルスの曝露を受けています。今後は水痘ワクチンの普及によって、こういった曝露をうけることは少なくなることが予想されているのですが、じつはこの曝露は「ブースター効果」というものを起こしているのです。

 これはなにかといいますと、VZV が体に入ってこようとしたときに、体にすでに VZV に対する免疫があれば(ワクチンをうけているか、すでにVZVに感染しているということです)、免疫がびっくりして再度反応し、免疫がメンテナンスされて VZV に対する抵抗力を維持するという効果のことなのです。

 このブースター効果によって、帯状疱疹の発生が抑えられている部分があるのですね。
 ですから、今後しばらくの間(つまり既に感染してしまっている人が多い状況においては)、ブースター効果がへることによって帯状疱疹の発症者が増える可能性は言われています。
 ▶ 水痘・帯状疱疹の動向とワクチン IASR Vol. 39 p129-130: 2018年8月号

 帯状疱疹を予防する目的でのワクチンは50歳以上の方々対象となっています



まとめ



 水痘と帯状疱疹はヘルペスウイルスの一種である VZVによっておこる疾患です。
 水痘は初めてかかったときに起こります。
 帯状疱疹は再発として起こるのでした。

 水痘ワクチンの定期接種化によって、患者報告数は著明に減っています。
 一方、高齢化や医療の進展によって帯状疱疹患者の増加の傾向がみられます。

 小児における水痘ワクチンの定期接種率維持と、ワクチンによる帯状疱疹予防をすすめていくことが大切と考えられますね。






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2019年6月16日日曜日

HPVV についての非常にわかりやすく丁寧な Online セミナー動画

 HPVV であるガーダシル製造元の MSD のサイトに、HPVVについて非常にわかりやすく丁寧な Online セミナーを編集した動画が掲載されています。





 HPVV の解説(エビデンスや数値もたくさんありわかりやすくも非常に正確ですばらしいです)、日本での騒動の経緯、今後どうしていくべきか、についても強いメッセージを発信されています。

 子宮頸癌は交通事故より多くの命を奪っています。HPVV の積極的勧奨接種再開に向けてしっかりと医療従事者も学んで行動していくことが必要と思います。

 医療従事者向けですが、ぜひご覧いただきたいと思います。

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2019年5月18日土曜日

重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) の簡単な解説




 今、日本でも感染のリスクがあり、かつ非常に高い致死率を持つウイルス感染症があるのをご存知でしょうか。

 それが重症熱性血小板減少症候群、英語では Severe fever with thrombocytopenia syndrome (SFTS)と言い、これを引き起こすウイルスが、重症熱性血小板減少症候群ウイルス (Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus; SFTSV)です。



重症熱性血小板減少症候群  (SFTS) について


 このウイルスは、Phenuiviridae に属するウイルスで、2011年に中国の研究者によって特定されたものです。そして、この疾患はマダニが媒介する感染症で、致死率が非常に高いという特徴があります。

 まず簡単に資料を紹介した後に、❶病気の方から説明し、❷発見の経緯など、❸簡単にウイルスの説明、❹感染経路の説明、❺そして現状についてまとめてみたいと思います。



SFTSに関する様々な資料のあるところ



 重症熱性血小板減少症候群について、資料のあるところをまずは提示します。

国立感染症研究所に詳しい解説ページがあります    

厚生労働省も情報を提供しています

▶ 日本語の総説も読みやすいです 
  https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsv/65/1/65_7/_pdf/-char/ja
  http://www.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/06504/065040558.pdf

▶ 良くまとまったレビューが Lancet infectious disease にあります
 Severe fever with thrombocytopenia syndrome, an emerging tick-borne zoonosis

▶ 実際の解剖例の報告は複数例ありますが、日本から初出はこれですね
 Two autopsy cases of severe fever with thrombocytopenia syndrome (SFTS) in Japan: A pathognomonic histological feature and unique complication of SFTS

臨床家の皆さんには UpToDate のリンク
CDC にのったレポート
 

 さて、資料を紹介しましたが、ここから簡単に解説をしていきたいと思います。



SFTSの簡単な解説



SFTS の概要


 今回まとめるこの疾患、重症熱性血小板減少症候群 SFTS は、SFTSV が感染することで起こる感染症です。
 潜伏期間は6日から2週間程度と考えられ、高熱と血小板低下などが特徴なんですね。

 実際の症状としては、消化器症状として嘔吐・腹痛・下血など、神経症状として頭痛・意識障害など、リンパ節の腫脹、凝固障害・血小板減少などが起こり、多臓器不全で死亡することがあります。

 病態としては、SFTSV が免疫を担う細胞の一種であるB細胞に感染し、急速に増殖することで全身に広がるとともに、血球貪食症候群などの全身性の炎症状態を生じることが分かっています。

 致死率はかなり高く、2019年4月24日現在、日本国内では404例の感染報告があり、65例の死亡例があるような状況です。つまり、致死率は16%に及ぶわけです。

 小児の感染例も報告されていますが(https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2342-related-articles/related-articles-433/6310-dj4332.html)、死亡例はすべて50代以降であり、高齢者の感染にはリスクがあるともいえると思います。


SFTS の診断法


 診断はまずは病歴や症状から疑うことが大切です。そして血液などからウイルスを分離することや核酸を検出することでなされ、抗体の検査でも行うことができます。


SFTS の治療法


 ワクチンはありません。治療は現在特異的なものはなく対症療法が中心ですが、ファビピラビル(アビガン)が有効でありそうなので期待されています(PLoS One. 2018 Oct 26;13(10):e0206416)。

 薬物療法やこれらの仕組み、ウイルス学的な面などについては、これはまたいずれ詳細にまとめたいたいと思います。



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SFTS の発見の経緯から


 さて、発見の経緯です。この疾患は、2007年に初めての報告があり、2009 年 3 月~7 月中旬にかけて、中国の湖北省と河南省の山岳地域において、原因不明の疾患が集団発生したことが初めの報告でした。

 その後、中国人研究者、于学杰 (Xue-jie Yu)らによって2011 年に原因ウイルスである SFTSVが同定されました。

 その報告がこれです。 NEJM誌ですね。
 ▶ Fever with Thrombocytopenia Associated with a Novel Bunyavirus in China

IASR https://www.niid.go.jp/niid/ja/id/2241-disease-based/sa/sfts/idsc/iasr-topic/4410-tpc408-j.html
より


 その後、これは中国に結構ひろく分布している病原体なのではないかということがわかり、日本にも症例があることが分かってきたために、2013年に日本で後方視的研究をしたところ、100例以上の症例があったことがわかったのです(IASR 34:108-109 & 110, 2013)。

 ▶ The First Identification and Retrospective Study of Severe Fever With Thrombocytopenia Syndrome in Japan

 これはただ事ではなく、日本国内にもウイルスがいることが推定されたため、調査がなされ、実際に日本にはウイルスがすでに土着しており、中国のウイルスと日本のウイルスは遺伝子的に非常に似ているが違いも見られたため、日本に独自に株があることがわかってきました

 系統樹解析といって、ウイルスの近縁の度合いや祖先を考察できる方法で調べると、中国や韓国から海を渡ってやってきたことが示唆されているんですね
 ▶ Phylogeographic analysis of severe fever with thrombocytopenia syndrome virus from Zhoushan Islands, China: implication for transmission across the ocean. Sci Rep. 2016; 6: 19563.

 さて、そんな SFTSV ですが、ウイルス学的にはPhenuiviridae というものに分類されます。構造からはマイナス鎖一本鎖RNAウイルスというものになりますね。日本では四類感染症に指定されています。
 
 近縁のウイルスとしてはクリミア・コンゴ出血熱ウイルスや、リフトバレー熱ウイルスなどの非常に致死率の高い出血熱などを引き起こすウイルスがあることが知られています。

 SFTSV はB細胞に感染しますが、これによってB細胞の機能が障害されて、病態が形成されるようであることもわかってきています。
 ▶ Deficient humoral responses and disrupted B-cell immunity are associated with fatal SFTSV infection. Nat Commun. 2018 Aug 20;9(1):3328.

 このようにウイルスについても研究がかなり集中してなされており、どんどん細かくわかってきていますが、今回は割愛してまたの機会に説明しようと思います。

 日本ではウイルス学的な研究は国立感染症研究所ウイルス第一部の西條先生が主導されている仕事が大きいですね(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000196829.pdf)
 臨床も含めると愛媛や長崎の先生も頑張っておられますし、西日本でやはりさかんです。

 余談ですが、ドラマ「インハンド」第二話にでてきたハートランドウイルスは、SFTSV 近縁のもので、2009年にアメリカのミズーリ州で発見されています。別のキララマダニが媒介すると思われているんですけれどもね…。



SFTSV の感染経路



 さて先走りました。感染経路としては、マダニ科のダニにかまれることで感染する人畜共通感染症であることがわかりました。


 
 マダニ科としてはフタトゲチマダニ、オウシマダニ、タカサゴキララマダニなどがあります。
 
 これらのダニが、SFTSVをもつ、ヤギ、ウシ、イヌ、ネコなどを刺し、またヒトも刺すことで人に感染するルートが一般的と考えられています。なので獣医学的にもこれは重要なんです(http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM1602_01.pdf

 いまのところ少数例ではありますが、動物から直接感染することもあり、2017年には徳島県で飼い犬からヒトに感染した例が報告されているほか、病猫の看護中にかまれた例、ネコの多頭飼育により感染したと思われる症例も報告されています。

 さらに実は、血液等の患者体液との接触により人から人への感染も報告されているんですね。血液中にウイルスがあるとその血液も危ないことになります。

 まとめると、感染経路は
  ❶ 動物 → マダニ → ヒト、
  ❷ 動物 → ヒト、
  ❸ヒト→ヒト 
 があり得ることとなりますね。

 日本国内におけるSFTSの発症はその多くが西日本で確認されています(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000030jzo-att/2r98520000030k7b.pdf)。

 また、SFTSV の国内分布調査もなされ、患者、SFTSVに抗体陽性のニホンジカ、SFTSVが検出されたマダニはいずれも西日本優位であることが判明しました
 ▶ IASR - SFTSウイルスの国内分布調査

上記 IASRより

そのほか epidemiology についてはこれも参考になります。
 ▶ 日本における重症熱性血小板減少症候群 IASR
 ▶ Epidemiology of severe fever and thrombocytopenia syndrome virus infection and the need for therapeutics for the prevention

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SFTS の現状



 さて、現状ですが、日本では依然感染者が出続けており、本日、2019年5月15日には長崎で感染したと思われる東京都内での発症例が報道されていました。
 ▶ マダニで感染症 GW 長崎でかまれる

 こういったことから潜在的に西日本中心にかなり問題のあるウイルス感染症であり、情報を徹底して普及しなくてはならないのですが、なぜかあまり伝わっていないところを感じますね。

 厚労省のページをもう一度みてみますと、資料は豊富ですね。

 このウイルスはワクチンもなく、かつ、治療法も確立したものはないので、予防するには感染経路であるマダニと動物との接触を避けることが大切です。

 感染研のこの情報は重要ですね ▶ マダニ対策、今できること

 そして、実は、外で飼っているペットや多頭飼育、野良犬・野良猫などは危険である可能性もあります。ですから注意しないといけませんね。

 

とにかくまずは知ってほしい SFTS



 実は身近で怖いウイルス感染症なのです。更なる研究も必要ですし、治療法・ワクチンの開発も望まれます。
 とにかく周知が望まれます。最後に厚労省のQ&Aを紹介しておきます。
 






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2019年4月25日木曜日

【書籍紹介】美しい電子顕微鏡写真と構造図で見るウイルス図鑑101

 ウイルス学を研究してますが、皆さんにお勧めしたいウイルスの図鑑を紹介します。
 電子顕微鏡で撮影した綺麗な写真とシンプルな解説でわかりやすいウイルス図鑑。



 【書名】美しい電子顕微鏡写真と構造図で見るウイルス図鑑101
 【著者】マリリン・ルーシンク/布施 晃
 【出版社】創元社
 【リンク】楽天ブックス Amazon 図書館

 この本は、とても読みやすい文章で、ウイルスについて、ウイルスの分類について、ウイルスの感染経路についてなどの解説などがなされたのちに、個別のウイルスについてカラーリングされた綺麗な走査電子顕微鏡写真などを提示しながら解説しています。
 
 解説されているウイルスもヒトに病原性をもつウイルスから、そうでないものまで幅広く、形も様々で非常に楽しめます。

 ウイルスについてちょっと知ってみたい、という方にも非常にお勧めできる一冊。
 大型本でハードカバーなので少し重いですし、写真が主体で紙は厚いです。
 図鑑という感じでよいですね。
 

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