患者に直接会うことはほぼなく、日々病理室にこもり、黙々と顕微鏡を使って診断する病理医…。
白衣をきて、聴診器をもって、笑顔で患者に接し、診察し、お話し、手術し…といった臨床医とは違った感じですから、物も違うものを使っていますよ!
まずはともあれ…顕微鏡!
顕微鏡 (© 2016 DBCLS TogoTV) |
顕微鏡は重要です。なにしろ標本を顕微鏡でみる、というのが病理医の基本的な仕事なのですから。もちろん、実は顕微鏡で見るだけが診断ではなくて、肉眼診断といって、実際の臓器を目で見て診断するパートも重要です。しかし、最終診断にはやはり顕微鏡が絶対に必要。
顕微鏡にはいくつか種類がありますが、病理医が使うのは生物顕微鏡のうち検査顕微鏡といわれるもので、種類としては光学顕微鏡のうちの明視野顕微鏡に分類されます。
(うーん複雑!)
日本で主流のメーカーは、オリンパスとニコンということになると思いますが、世界にはツァイス、ライカなどもあります。
私は個人的にはオリンパス製が一番使いやすく暖かい色で見えて好き。
初めにつかったのは オリンパスのBX50、その後、BX52 というのを愛用していました。
診断プラットフォームとパソコン!
レジデント時代の私の診断机 |
病理診断を病理医が入力して、その結果が電子カルテに反映される、そういうシステムはいろんな会社から出ています。
有名どころではドクターヘルパーなんていうのがあります。
いままでにいくつかの施設でいくつかのシステムを使ってきましたが、個人的には Expath という、INTEC 社の出している病理診断システムはとても優秀だと思っています。きわめて。
パソコンについては電子カルテとある意味でつながったシステムであることが今は多いですね。ダブルモニターだととても便利です。
そして、顕微鏡写真が撮れるシステム、これもいいですね。なかなか高いんですが…。
文房具も大事…なかでも細い油性ペン!
病理医は顕微鏡をのぞきながら診断しますが、診断対象はプレパラート標本と言って、ガラスになっています。このプレパラートに、チェックしていくんですね。病変のあるところを。顕微鏡をのぞきながら、点を打っていきます。
それに使うのが、油性ペン。水性ではだめです。落ちますので。
細いものがいいです。かつ、それぞれにこだわりがあるので、いろいろな油性ペンを見かけますね。
よく見かけるのは、ゼブラの「マッキー極細」でしょうか。
しかし私は、舶来の…なんて格好をつけるわけではないですが、ドイツ製、ステッドラーの「ルモカラー 超極細」を愛用しています。おすすめなんですが、人によっては角度によってはマーキングしにくいとの意見もありますね…。
PHS…
これは病院から与えられるものですね…。呼び出しはほとんどないのが病理医だと思いますが、臨床医からの問い合わせ、というのはよくかかってきます。
私は臨床医に積極的に電話をする方でしたので、PHSは重要なツール。
そして重要なのは書籍!
レジデント時代に2か月で買いあさった本 これで前後2段になっている…。 |
病理医は一にも二にも書籍、文献で勉強すること、業務にあたってはつねに引くことが求められます。書籍は買いましたね、個人的にたくさん。もちろん部門でもたくさん買っています。
かつてレジデントだったとき、ひと月に診断関係の本だけで 120 万円分購入したことがあります。レジデント1年目の書籍代は約 350 万円。収入の2/3 を超えていましたね。気が狂ったように勉強していた時期の話ですが…。
まずは、下にあげるこのたくさんのシリーズ本を見てください…
癌取扱い規約シリーズ
上にあげました表紙(すべて amazon へのリンクにしてあります)が、実はこれですべてではないのです…。これらは臓器ごとに作られている癌の、取扱い規約というものです。
それぞれの領域の学会が規約委員会をつくって、制定しています。
出版はすすべて金原出版からなされるという暗黙の決まり。
癌の取扱い(病理でいうと診断基準や記載法)の、日本の、共通の規約なのです。
取扱い規約は基本的に癌の診断では非常に重要なものですが、部位によってはあまり重要でないというか、共通のお約束としてあまり重視されていないものもあります。
血液腫瘍取扱い規約ってのもあるんですが、だれも使っていません…。
規約には何が書かれているかというと、臨床画像の評価法、手術の術式の記載法、肉眼観察した病変の記載法、切出し法、組織型、ステージングなどがまとめられています。
病理医にとっては、比較的代表的な画像がアトラスとして載っているのはよいところ。まぁ分量は少ないですし、組織型の解説は、ごく基本的かつ共通の部分に限ります。解説は基本と原則は押さえられていますね。
これら取扱い規約は日本の学会が決めている極めてローカルなものなのですが、世界基準と言えば UICC というところが出している TNMアトラスであり、組織型については WHO 分類 というものがあります (いずれも後述)。これらと規約は細菌は整合性を持たせようとしていますが、つねに遅れているのが日本版。また、遅れているだけではなく、ガラパゴス化している部分もありますね。
WHO 腫瘍分類シリーズ
WHO、世界保健機関で各分野のエキスパートを集めて作成している国際的な疾病分類を解説するシリーズ。これは解説とアトラスからなっています。
かなり黒っぽく見えますが、青い本という認識で、「ブルーブック」の愛称で呼ばれています。
疾病の分類に関しては、これがスタンダード。
私の専門にしている血液腫瘍はこの本が聖典的な扱いになっています。脳腫瘍や骨軟部腫瘍もそうかな…。
乳腺などは日本ではガラパゴス化してしまっており、なぜかWHO分類とはかけ離れた分類のように思える部分までありますが…。
出版は、フランスにあるIARC。題名も WHO Classification of Tumours で統一されています (Tumours、綴りがイギリス英語ですね)。
現在は第4版となるように、全臓器で統一的な改訂を行っているところです。
病理医にとっては最も基本になるシリーズ。結構高いんです…自腹で揃えましたが…痛い痛い…。
AFIP アトラスシリーズ
AFIP から出ていたこのシリーズは、非常によい病理のスタンダードな教科書・アトラスです。実は今でも刊行は続いていて、ARP という出版社が続けてくれています。
赤いのが腫瘍性疾患、青いのが非腫瘍性疾患なんですね。とても解説が丁寧で、文献も網羅されていて信頼できる本です。
しかしいかんせん、高い。日本での代理店は南山堂になりますが、Amazon.co.jp ではすべては手に入らないのが痛いところ。代理店以外から買う場合には、主に Amazon.com で買うことになりますね。
腫瘍鑑別診断アトラスシリーズ
このシリーズも全部買っちゃいますよねぇ… |
日本の病理関係の最大の出版社は文光堂です。この文光堂から出ているシリーズが腫瘍鑑別アトラスシリーズ。日本語で書かれた腫瘍の解説・アトラス本では最高のシリーズと言って間違いなく、一線の病理医が執筆しています。
とても良い本で、これは業務では頻繁にひいて使うべきと思いますし、読んでも勉強になる。
しかし、高い。高いんです。が、買っちゃうんですよね…あーあ。
しかし、高い。高いんです。が、買っちゃうんですよね…あーあ。
その他のシリーズものなど
外国のシリーズだと、Amirsys on Expert Consult や Diagnostic pathology シリーズなどいくつも種類があります。最近は海外のシリーズ物は、電子版にアクセスする権利がついているので便利ですね。
そして、当然シリーズ物以外の単発本はたくさん、たくさんあります。
いずれにせよ、病理においては書籍が非常に非常に重要ということですね。
いずれにせよ、病理においては書籍が非常に非常に重要ということですね。
洋書シリーズもガンガン買います |
雑誌
「病理と臨床」(▶ 文光堂ホームページ) です。
文光堂から出ている雑誌で、臨床病理に特化した一冊。
「臨床病理」という雑誌がありますが、あれは検査医学会の学会誌なんですね。
白衣と防護器具
白衣は基本的に診断中は着なくてもよいのでしょうが、切り出しという作業の時には着ることになります。
解剖着?? ってこれはちがーう!! |
そして、解剖にはメスを使いますし、その他特別な器具もたくさん使います。
これらも大事な道具ですね。
その他の道具たち…
切り出し、解剖、標本作製、そういったことやそれにつかう道具についてはまたおいおい書いていきたいと思いますが、専門的かつ、マニアックなものがまだまだたくさんあります !! 手術とはまたちがった形ですからね。
というわけで、まとめると
今回は主に診断室で使っている、病理医の道具たちについての紹介でした !!
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