2018年7月2日月曜日

アメリカの蛍

 夏になってきましたが、夕方になるとちらちらと光がそこら辺を舞っています。
 黄色くて、小さく、はかない光が。

 蛍です。D.C. のナショナルモール内にもちらちら、NIH 構内にもちらちら、そしてポトマックの家の周辺にも…。
 かわいらしい光がはかない。

 あまりにたくさん舞っているので、近づいてみますが、簡単に捕まえられます。たくさん飛んでいる、ホタル。

Fig.1 ホタルをつかまえてみた

 日本ではホタルといえば、ゲンジボタルとヘイケボタルの2種類ぐらいなのかな、水棲なはずで、最近は環境が良くなくて減っているのかな、アメリカは環境いいのかな…なんて漠然と思って、聞いてみたり調べてみたりしました。

 結論から言うと、これらの疑問は全部正しくなかった…のです。

 アメリカでみかけるホタルは陸棲なんですね。幼虫は木の陰で、カタツムリなどを餌にして生きているようです。
 そして、実はホタルは陸棲がメジャーで、日本でみられる水棲の方が珍しいのだとか。日本国内では約40種類もいるそうです(源氏・平家だけではなかった…諸家ありということか)。

 ホタルって、世界では 2000 種類もいるんですね。

 ホタルの発光は、ルシフェラーゼ (luciferase, Luc) という酵素がルシフェリンという基質を ATP を用いて反応させて発光させるもので、冷光とも呼ばれる非常に効率よく熱損失のほとんどない形式によります。

 このルシフェラーゼ、生物学の実験には非常によく使われており、ホタルルシフェラーゼ (firefly luciferase) は私も今使っています。ホタル以外の生物でもこのルシフェラーゼはあり、波長の違いか、うまく使えば様々な実験を組むことができます。

 このルシフェラーゼの発光の謎に、X線結晶解析を用いて構造学的に迫った論文は、2006年に京大薬学部の中津先生、加藤先生が発表されています (Structural basis for the spectral difference in luciferase bioluminescence: Nature volume 440, pages 372–376 (16 March 2006、Spring8の報告京大情報)。

 個人的には、加藤先生に学部生時代にお世話になり、本当にすばらしい仕事をなされるんだなぁと思ったのはいまでも鮮明に覚えています。

 ちらちらと舞う夏のホタル。美しいです。
 アメリカに来られたら是非見てもらいたいものの一つになりました。



一年之計。莫如樹穀。十年之計。莫如樹木。終身之計。莫如樹人。

 何かの時に心に響く格言や名言、諫言ってありますよね。
 昔所属していた研究室に張ってあった標語を、ふとアルバムから発見。

人を育てよ


Fig.1 研究室に張ってあった

 「今日を楽しむものは花を活けよ
  一年先を楽しむものは花を植えよ
  三十年先を楽しむものは木を植えよ
  百年をおもんぱかるものは人を育てよ」

 いいですね。人を育てること、それこそが未来を作る。
 当時、出典はなんなのかな、とおもってしらべたのですが、どうも原型は中国の古典である「管子」にあるようで、「三計」として知られている言葉からのようです。


管子権修第三



 「一年之計。莫如樹穀。十年之計。莫如樹木。終身之計。
  莫如樹人。一樹一穫者穀也。一樹十穫者木也。一樹百穫者人也。
  我苟種之。如神用之。舉事如神。唯王之門。」管子権修第三

 書き下すと、
 「一年の計は穀を樹うるに如く莫く、
  十年の計は木を樹うるに如く莫く、
  終身の計は人を樹うるに如く莫し。 
  一樹一穫なる者は穀なり、
  一樹十穫なる者は木なり、
  一樹百穫なる者は人なり」

 後半は、一を植えて一を得るのが穀物、一を植えて十を得るのが木、一を植えて百を得るのが人である、ということですね。


誤解されいている国家百年の計



 国家百年の計というのはここから来ているんですね。つまり、人を育てることが国の百年をおもんぱかる、つまり人を育てること、これが大事という思想

 ただ国家百年先まで設計する、ということではないです。人を育てる、ということ。

 人を育てることを大切にしたいです。

 人への投資が最もリターンが大きいと言えるかもしれません。人を大切にすること、これがすべてを大切にすることにつながるように思います。
 
 日本はシュリンクしていっていますが、今こそ、人を育てることにリソースをもっと割り振るべきではないのかな、そんな風に思ったりもします。



 ちょっと一冊 … 中国古典の名言録


2018年7月1日日曜日

【書籍紹介】嘘と絶望の生命科学 (文春新書 986)

 科学研究関連の書籍の紹介です。

表紙

【書名】嘘と絶望の生命科学 (文春新書 986)
【著者】榎木 英介
【出版社】文藝春秋


科学ウォッチャー榎木先生の一冊



 科学ウォッチャー、病理診断医であり、理学部卒業後に医学部編入という異色の経歴をもつ榎木英介先生の一冊。

 著者は「博士漂流時代」から継続的にポスドク問題や研究環境、アカデミズムのゆがみを丁寧に書かれておられますが、本作は STAP 問題もとりこみ、日本の現在の生命科学を中心とする科学研究の問題点を一般にもわかりやすくまとめられていて、読みやすく、考えさせられる。


分かりやすく的確なデータ提示と解説



 データは継続的に科学業界を見られてきたからこそ端的にストレートにわかりやすく提示されており、論拠も、ご自身のご経験、多くの業界の方々との仕事、そしてデータまでひろく拠っており、現状がよくわかる。

 研究室、というある意味では独立王国のようなところでにっちもさっちも行かなくなり、将来の職は不安定で気づいたときには折り返せない。大学院重点化以降の博士号取得者増加をしたものの博士号取得者を活用できていない…そんな現実のある今の日本の科学研究環境。

 STAP、研究不正も含め、わかりやすく非常によかったです。
 おすすめ。★★★★★ (5/5)


● 関連記事


 ・【書籍紹介】論文捏造 (中公新書ラクレ)


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2018年6月22日金曜日

【サイト紹介】ワクチンで防げる病気についてのわかりやすいサイト

 ワクチンで防げる疾患を VPD ということは何度か触れています。

 今回は、その VPD やワクチンについてわかりやすく、かつ、丁寧な情報を提供しているサイトを紹介いたします。



 ▶ KNOW★VPD 


 このサイトはとてもよくまとまっていて、VPDの解説、ワクチンの解説、ワクチンをめぐる情勢やデータ、実際の接種スケジュールなどの情報が提供されています。

 ぜひ一度確認してみていただきたいと思います。
 会員名簿もありまして、信頼できる医療従事者の方がリストされています。
 ご活用もいただければと思います。


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▶ 病理医研究者のぼちぼち日記

2018年6月21日木曜日

働きすぎの予感

 働きすぎ、クレイジーなのかもと最近思います。

 こちらに来て、プロジェクトを走らせ始めてから、週末も含めて一度も休んでいません。がんがん実験…毎日毎日なんの休みもなくやっております…。

 頭の中に浮かぶのは…月月火水木金金…いかん。日本人の悪さですね。

 24時間働けますか?は幸いやっていません、毎日9-18時ぐらい。通勤に計3時間は別にかかっていますけれども…。


Fig.1 まるで月月火水木金金…


 でも、認めてもらって信頼を勝ち取るには努力と成果が必要です。
 こちらにきてまだ日が浅いのですが、焦りもなぜかあります。
 がんばらないと。でもどこかで休みも必要かもしれません。

2018年6月15日金曜日

【サービス紹介】書籍の買取サービス - Book River

 書籍の買取サービスを紹介します。
 以前、別のサービスも紹介しました。
 
 ▶ 【サービス紹介】使い終わった大学の教科書を買ってくれるサービス - テキストポン
 ▶ 【サービス紹介】専門書・医学書・大学教科書の買取サービス - 専門書アカデミー


 書籍って増えますよね…とくに読書家にとっては悩みの種。書籍を処分しようとすると、ブックオフなどの一気に買い取ってくれるところに頼むことも多いですが、どうも面倒で捨ててしまうことも多いかと思います。

 ブックオフは便利で、好きなサービスなんですが、買取額が安くて購入時からするとかなり悲しいですし、きれいでないと売れないですし、内容ではなく形式などで査定されるので、読み切りの文庫や漫画ならいいのですが、ちょっと高い単行本やなんかはもったいなく感じることもあります。

 私もたくさんたくさん書籍はもっていまして、処分するときには捨てたり、ブックオフに売ったり、ヤフーオークションに出したり、メルカリしたりしましたが、今回紹介するのは、かなり高額で買い取ってくれることがあるお得なサービスです

 それが、Book Riverです。


 

 

 このサービスでのよいところは買取率が高く、価格が公開されているところ。
 詳細査定内容がわからないままだったり、買取ではなく引き取りにされてしまって値段がつかないことも多いのが古書買取。

 そういうところが透明なのがとてもいいところですね。
 もし大事な本を処分する、ということがあるなら、お金に換えてみるのはどうでしょう。おすすめのサービスです。



レビュー関係の記事は別ブログにまとめています

2018年6月14日木曜日

D.C. の和食、Sushi Taro へ。

 今日は日本人研究者仲間4人で連れ立って、日本食を食べに夕方からお出かけしました。

 やってまいりましたのは、ワシントン D.C. の、デュポンサークル駅からそばにあります、Sushi Taro。人気のお店で、おいしいと評判。

 
Fig.1 Google Map で。デュポンサークルの東。歩いて約8分。

 今回は予約はしましたが、お任せカウンターという一番の贅沢はしません。
 メニューは豊富で、海鮮、寿司、和食、しっかりあります。日本酒も豊富。とても高い日本酒までありました。

 客層は東洋系の人だけでなくにぎわっています。

 
Fig.2 御造りをたのむ
 御造り、みそ汁、粗煮、ごはんなど。おいしい。ゆっくり話しながら楽しみました。
 
 お値段がちょっと高めです。たまに来るにはいい感じ。
 こちらに来てからいただいた日本食のなかではとてもおいしい。よきよき。

 がんばって仕事しよう、というリフレッシュになりました。


● マップ
 ▶ Sushi Taro


2018年6月12日火曜日

NIH ディレクターズ バンド

 夏に向かっていますが、NIH のサマーイベントがありました。
 
 Building 10 前でバンドがセッションしています。

 バンドは、ディレクター (NIH所長) のもの。Francis S. Collins(フランシス コリンズ) NIH 所長はギターを弾き、歌を歌われることでも有名です。
 もちろん素晴らしい科学者であられます。熱心なクリスチャンとしても有名。
 とにかく素晴らしい人、というのがまわりの評判ですが、歌も上手。

Fig.1 真ん中で背の高い方が所長

Fig.2 演奏に熱も入り、のりのりです
 こういうイベント、所長がでてきてエンターテインメント、アメリカらしくて最高です。日本でもこういう感じでリラックスして楽しむ場所をもっとつくれるといいなぁなんて思っちゃいました。


2018年6月6日水曜日

オンコロジーワークショップへ

 今日は午前中仕事をしたのちに、お昼から、D.C. の日本大使館横、旧日本大使公邸において行われた第6回 オンコロジー ワークショップに参加してきました。 

Fig.1 ワークショップ

 テーマは AI。医療にもAIが入ってきますし、オンコロジー領域でも重要な役割を担っていくでしょう。
 
 面白い話をたくさん聞くことができ、また、意見交換では非常に有益な情報を手に入れることができました。 
 新しくお知り合いになった方もたくさん。ネットワーキングですね。ありがたいことです。

 ちょっといろいろ考えるところはありますが、とにもかくにも研究をがんばらないとなぁと思ったのが私的な感想。

2018年6月3日日曜日

倒木…

 バスで通勤しております。家から職場まで約50分、くねくね道路を全力で飛ばすバスにのっています。
 
 今日は雨風が強く、職場にいてもビュービュー。
 帰りのバスに乗ったところ、途中でなぜか立ち往生…どうしたのかな??

 倒木!!


 びっくりしました。木が…道をふさいでいるよ。

 しばしバスの中で茫然…運転手は電話している。

 その後30分ほどでチェーンソーをもったおじさんが現れ、木を切って通行可能に…。
びっくりしましたが、驚いていたのは私だけ。

 交通事故やこういうアクシデントに、バスの運転手さんは慣れっこの様子。
さすがアメリカ…すごい。

 ちょっと帰宅は遅くなりましたが、びっくり体験でした。