▶ 朝日新聞「結核の日本医大教授、診療続け患者感染か 11人が陽性」
記事によると、
日本医科大病院(東京都文京区)で、肺結核を発病した医師がそのまま診療を続け、複数の患者に菌が感染した疑いがある
とのこと。この医師による診察を受けた患者などは 370人におよび、11人の患者から結核が陽性となったとのこと。
結核は空気感染する感染症であり、感染力も強い。医療施設での感染もリスクである。
日本全国での結核患者は、2017年に約16789人であり、現在でも大きな問題である。 この記事にもあるように、医療従事者では、医師 38 人をはじめ計 534人が感染している。
この10月にも別の病院での集団感染のニュースがあった。
▶ 関連記事 「【情報】東京の病院で結核に24人が集団感染、2人死亡」
結核の診断について簡単に
結核の診断は、肺結核であればまずは胸部レントゲンで病変がないか確認することから始まることが多い(健康診断など)。ただし、他の理由で感染や菌への曝露が疑わしければ次の検査もすぐに行われることがある。
結核に対する特異的な免疫反応をみる検査として、インターフェロンガンマ遊離試験(IGRA) 、具体的にはクオンティフェロン検査やT-SPOTなどで感染しているか否かをまず推測する。
発症が疑われれば、痰などを採取して抗酸菌培養を行い、結核菌が最終的に検出されれば確定診断となる(PCRという方法による結核菌DNAの検出検査も行われることがある)。
感染していることと発症していることは別で、感染は体内に結核菌が住み着くことであるが、実際に症状をともなう病気になることが発症である。
詳しい情報は、結核予防会のホームページにある (▶ ここ)
結核の病理診断
癌と鑑別するためや、リンパ節の腫れなどで結核の病変が病理診断されることがある。
病理診断をする際に結核病変に特徴的なのは、肉眼的に壊死のある結節(チーズのようにみえるため乾酪壊死という)である。
顕微鏡で観察すると、中心部壊死を伴う肉芽腫があり、その周辺には類上皮細胞およびLanghans型巨細(▶ Wiki)が取り囲み、さらに周囲にリンパ球が浸潤する形となる。
抗酸菌染色またはオーラミン・ローダミン染色では小さな桿菌がみられることがある(感度は高くない、前記の本ブログ記事に写真掲載)。
鑑別診断するべきものは、他の抗酸菌による病変(MACなど)、真菌感染症、いわゆる Wegener 肉芽腫症などの肉芽腫性疾患、サルコイドーシス、および、時に癌などである。
(下の図は Flicker より、また良い写真が「病理コア画像集」にある ▶ここ)
Fig.1 結核 HE |
結核は病理医の職業病であった時代がある。特に解剖例において、血液を含む体液がエアロゾルとなる手技があること、N95マスク着用などの防護措置をとらずに解剖を行っていたことなどが原因である。
また、結核は肺に病変を作ることが多いが(実は肺だけではない)、癌と鑑別するために、固定せずに凍結検体による迅速診断を行ってしまうこともある(あった、と過去形でいいきれない)。これは感染のリスクとなりうる検査方法である。
医療従事者にとっても、防護措置を徹底することと、定期的に健診を受けること、呼吸器症状(咳など)が長引いた際にはしっかり検索を行うことが重要と考えられる。
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