ラベル 基礎医学 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 基礎医学 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2020年4月26日日曜日

Yahoo!ニュース個人に記事を書きました

 Yahoo!ニュース個人に記事を書きました。
 ちょっと新型コロナウイルスにに関して。



 ▶ どんなウイルスで、どのように感染するのか? 新型コロナウイルスのそもそも論

 新型コロナウイルス SARS-CoV-2 について、基礎からわかってもらうことを目的として簡単に書きましたので、お読み頂ければ幸いです。
 連載というかたちで少し新型コロナウイルス SARS-CoV-2 とそれによって引き起こされる疾患 COVID-19 について簡単に書いていきたいと思っています。

 まぁこのブログの方の更新が全くできていないので、ブログも更新せねばなとは思っておりますが…。

 
● 関連記事
 ▶ 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2(2019-nCoV))による COVID-19 について
 ▶ 飛沫感染と空気感染(飛沫核感染)の違いについて





気が向きましたら応援クリックをお願いします!↓
  

note に 医学・医療関係の記事をまとめています

病理の話題は別ブログにまとめています

研究関係の話題は別ブログにまとめています

その他のブログ一覧はこちら

投げ銭・ご寄付などのリンク
もしよい情報などがありましたら
▶ リンク

2020年1月11日土曜日

【書籍紹介】バイオ実験の知恵袋―効率アップとピンチ脱出のワザ350

 バイオ実験についてちょっとしたことを知りたい、ちょっと作業上でアイデアがほしい、というときによい一冊、バイオ実験の知恵袋を紹介いたします。



 【書名】バイオ実験の知恵袋
 【著者】小笠原道生
 【出版社】羊土社
 【リンク】楽天ブックス Amazon e-hon honto
      7net 紀伊國屋書店 図書館

 
 本書は、どちらかというと初心者がバイオ実験で躓きやすいところや、アイデアを盛りこんだ本なのですが、実験になれている人のほうがより、の本から得られるアイデアは結構役に立つことが多いと思います。

 もともとは羊土社の実験医学の連載にあったものですが、とにかく、裏技的なものも多くのっているのがとても良いのですね。あぁ、こんな方法をとれば効率がよくなるのか、こんな楽する方法が、ということが結構たくさん書かれていてよいのです。
 
 超初心者はしっかりと入門書から読んだ方がよいと思うので、本書から突然入るのはどうかと思いますが、ちょっとできるようになった中級者から、初心者を指導するようになる上級者がよむとより効果的であると思います。

 身近なバイオ実験のちょっとした躓きだけでなく、効率を求めてみたい人にはぜひ一読をお勧めしたいと思います。




気が向きましたら応援クリックをお願いします!↓
  

note に 医学・医療関係の記事をまとめています

病理の話題は別ブログにまとめています

研究関係の話題は別ブログにまとめています

その他のブログ一覧はこちら

投げ銭・ご寄付などのリンク
もしよい情報などがありましたら
▶ リンク



2020年1月7日火曜日

【書籍紹介】EBウイルス 改訂第3版

 超マニアックな書籍の紹介です…紹介してどうするのか…そこは不明です。






 この本は、たった一つのウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス(Epstein-Barr virus; EBV) についてかかれた本です。このウイルスに的を絞った本としては、和書としてはこの一冊(前の版はありますが)しかないように思います。

 EBV は多くの成人(人口の9割以上)がすでに感染しているウイルスであり、がんを引き起こすことなどが問題となるウイルスです。ウイルスの種類としてはヒトヘルペスウイルス属に含まれているもので、human herpesvirus 4(HHV-4) というのが正式な略称にはなりますが、慣用的に発見者二人の名前をとって名付けられたまま通称になっています。

 この本は、日本の EBV 研究者が集まって執筆している本であり、このウイルスについての基礎研究的な部分と、臨床に関する部分とに分かれて書かれています。
 
 内容は、EBVに関わる臨床病態の章と、基礎研究的な部分としてEBVのウイルス学についてがまとまっています。

 決して読みやすい本ではありませんが、EBVに関わる臨床をされている先生や、基礎医学的な興味としてEBVに関心のある方にはお勧めしたい一冊です。

 



気が向きましたら応援クリックをお願いします!↓
  

note に 医学・医療関係の記事をまとめています

病理の話題は別ブログにまとめています

研究関係の話題は別ブログにまとめています

その他のブログ一覧はこちら

投げ銭・ご寄付などのリンク
もしよい情報などがありましたら
▶ リンク



2019年3月14日木曜日

ハゲタカジャーナル(悪徳雑誌)の見分け方、査読依頼、インパクトファクター…

 ハゲタカジャーナル(悪徳雑誌)について何度か書いてきましたが、今回はそういったジャーナルの見分け方などについて書きたいと思います。




 ハゲタカジャーナルは、日本医学会は悪徳雑誌、Wikipedia では捕食出版としていますね。この記事ではあまり考えずに言葉を使います。

 前までの関連記事。
 ▶ 粗悪・悪意のある学術雑誌の弊害 - Beall's List のこと
 ▶ ハゲタカジャーナル に掲載して博士号取得した例がかなりありそうとの調査
 ▶ ハゲタカジャーナルへ(悪徳雑誌)の投稿を控えるよう日本医学会が注意喚起

 この問題については、北海道大学北キャンパス図書室「国際オープンアクセスウィーク2018」企画の「オープンアクセスとハゲタカジャーナル」の資料もわかりやすいですね。

 なぜ横行するのかは、講談社のサイトに記事があります。
 ▶ ハゲタカジャーナル、ダメ絶対! でも、その横行にはそれなりの理由が……
 ハフィントンポストにもありましたね。
 ▶ 劣悪な学術誌「ハゲタカジャーナル」とは? 掲載料が目当て、 根拠乏しい「疑似科学」を拡散
 日経新聞にも
 ▶ 学術の健全性損なう「ハゲタカジャーナル」 


ハゲタカジャーナル(悪徳雑誌)の見分け方


 投稿前に考えることをまとめてくれているサイトがあります。
 Think. Check. Submit. (日本語版) です。これは日本医学会の注意喚起でも引用されていました。再度簡単にまとめて示します。これをまずはチェックしましょう。

 (1) あなたや同僚はそのジャーナルについて、
   掲載論文を以前に読んだことがあり
   最新論文を容易に見つけることができますか
 (2) 出版社名が明記され、メール、電話、郵便で連絡が取れますか。
 (3) そのジャーナルはどのような査読を行うか明白ですか。
 (4) そのジャーナルで掲載されるための料金の内容と
   どの段階で請求されるかについて説明 されていますか。
 (5) そのジャーナルには編集委員会は設置されていますか。
   あなたは編集委員について知っ ており、
   編集委員は自身のサイトでそのジャーナルに触れていますか
 (6) その出版社は学術出版業界で認められた団体に加盟していますか。
   ・Committee for Publication Ethics (COPE)
   ・Open Access Scholarly Publishers Association (OASPA) 
 (7) そのジャーナルは以下のデータベースに収録されていますか。
   ・MEDLINE
   ・WHO Global Index Medicus (GIM) 
   ・Web of Science
   ・Scopus 
 (8) そのジャーナルは以下のリストに登録されていますか。
   ・Directory of Open Access Journals (DOAJ)
 

ホワイトリスト=信用できるリストを用いてのチェック


 とくにDOAJのリストはチェックしておきたいところ。いわゆるホワイトリストであり、ここに登録されていればとりあえずは安心です。
 もちろん、MEDLINE などに登録されているか、検索もするべきです。

ブラックリスト=ハゲタカジャーナル…


 悪徳雑誌である、またはかなり疑わしい、ジャーナルをまとめたリストも公開されていますので、投稿前や査読前、論文を読む前にここでチェックするのも大事です。ホワイトリストと合わせて使用することで、かなり網羅できるはずです。有名なのは以下。

  ▶ Beall's List of Predatory Journals and Publishers - Publishers
  ▶ Stop Predatory Journals
  ▶ CABELLS

 ブログではこんな記事もありました。
  ▶ ハゲタカ出版社チェックはしておきましょう


ハゲタカジャーナルにはインパクトファクター(Impact Factor; IF) はついていないことももちろんありますね


 IFは Clarivate Analytics 社が Web of Science内の被引用数に基づいて計算しており、IFを持つジャーナルは Web of Scienceに採録されている約12,000タイトルに限られています。なので、IFがついていることも重要です。Journal Citation Reports(JCR)にそれらは掲載されます。
 ただし、まともなジャーナルでも新しい雑誌では尽きませんので注意は必要です。
 
 また、IFだけでなく Elsevier の行っている CiteScore というものもあり、こちらは  Scopus での被引用数から算出されています。
 なので、Scopus もチェックするといいですね。

 さらなる注意としては、独自の計算を IF として掲載していることがありますので、かならず、JCR または CiteScore でチェックしましょう。

こういったジャーナルに載ってしまうと不名誉です。また査読依頼は断りましょう


 騙されたり、業績水増し目的だったりするかもしれませんが、こういった悪徳雑誌に載ってしまうと不名誉です。こんないいブログもありました。
 ▶ ハゲタカジャーナル(粗悪学術誌)論文掲載 不名誉な大学ランキング【悲報】東大、阪大などの研究者も投稿していたことが発覚  (≧▽≦ )

 とにかくこういった雑誌に掲載されることは不名誉ですし、業績としてはてなマークになります。また査読を引き受けることも加担したことになりますから、拒否しましょう。
 
 科学の健全な維持・発展のために、こういった雑誌にはかかわらないようにしないといけませんね。


関連記事など


 ▶ ハゲタカジャーナルに関わらないために Medical EnglishService
 ▶ <記事紹介> なぜ研究者は「ハゲタカジャーナル」で論文を出版してしまうのか
 ▶ ハゲタカジャーナル 対策がヤバ過ぎる…
 ▶ ”粗悪学術誌””ハゲタカジャーナル”の何が悪いの?
 ▶ ハゲタカジャーナルに奪われた私の1500ドル
 ▶ 【重要】ハゲタカジャーナルにご注意ください








気が向きましたら応援クリックをお願いします!↓
  

note に 医学・医療関係の記事をまとめています

病理の話題は別ブログにまとめています

研究関係の話題は別ブログにまとめています

その他のブログ一覧はこちら

投げ銭・ご寄付などのリンク
もしよい情報などがありましたら
▶ リンク

2018年12月21日金曜日

かんたん赤ちゃんレベルの ウイルス学 その1 ウイルスとは何か

 簡単に基礎医学のところから医学・医療について呟くシリーズを続けています。今回はウイルスとはなんなのかということの基本について少しお話をしたいと思います。

 いずれ、昨今問題になっている、子宮頸癌について少し触れたいのです。そこで、そこにたどり着くために何をお話すればいいのか考えてみました

 子宮頸癌というのは女性の子宮頸部に生じる癌 (carcinoma) ですこの疾患についてお話しするには、まず、腫瘍というのがどういうものか、悪性腫瘍とはどういうものか、子宮頸癌とはどういうものでどういう特徴があって、どういう治療があるか、ということを話したい。

 腫瘍学の基礎は大事だと思うのですと同時に、子宮頸癌の原因のほとんどはHPVというウイルスによって生じます。ですから、HPVの話もしたい。HPVはワクチンで防げますので、ワクチンの話もしたい。

 ワクチンというのは免疫を利用するある意味では薬の一種です。免疫については少し今までに述べましたが、ワクチンの解説をするのに十分な領域は述べていません。なので、免疫の部分もまた補強したい

 というようにたくさん関連する基礎事項というのはありまして、一つのことをしっかり理解するにはかなり広範な基礎的な知識がいる、これは医学・医療の特徴でもあります

 そこで考えたところ、①ウイルス→HPV→子宮頸癌、②腫瘍学→癌→子宮頸癌、③免疫→ワクチン→感染・癌予防、④感染症→性感染症→HPV というようにいくつかのルートをつくりつつお話しようかなと思い立ったわけです

 それらがある程度終わったら、ワクチンや薬について、治療についてお話し、反ワクチンの言い分を一つ一つつぶしていきたいと思います

 さて、いつも前置きが長いですねよろしくない。今回はウイルスについて話をしたいのでした。ウイルスと細菌や真菌の違いもちょっと触れたいと思います。これは、風邪になぜ抗生物質を使うという発想が間違いであるかにも関わります。


生物とはなんだろうか


 さて、生き物とはなんでしょうか。生物とはなんでしょうか

 はぁ?生きてるものでしょ。ということになりますよね

 生きているものが生き物。生物というのは生命をもっているもの、生命をもっているのが生きているもの…生き物??

 トートロジー(同語反復)になって定義できませんね。

 意外に、この、生物を定義するのは難しいのですでは、生物に分類されるものはなにか。動物 (哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類…)・植物・菌類・細菌・古細菌などです、さて、これらの特徴はなんでしょうか。

 そうやって考えるときには「『無』生物」との対比で考えるといいですね
 生きていないものとの違いはなにか。

 いろいろ挙げられますが、

  ① エネルギーを変換することができる、
  ② 自分の状態を維持することができる、
  ③ 自分自身と外とが明確に分かれている(独立している)
  ④ 自分自身の子孫を増やして残すことができる、

 などがあげられます

 なかなか難しい
 
 ではもう一度生物に分類されるものに共通することを考えてみます。哺乳類から菌まで。簡単な特徴が一つあります。それは、最小単位というべき「細胞」からなっているということです。



細胞


 細胞というのは、外界とは区切られた一つの塊で、一つ一つが機能を持っています。エネルギーを変換して、自分を維持して、外とは明確に分けられていて、分裂して増えることができます。

 そう、生物の特徴かな、として挙げた上の機能をだいたい持っていそうですね。

 これは結論になってしまいますが、雑に分類すると、細胞はある意味で生物の最小単位といってもいいのです「生物とは細胞からできている。」…?実は少々言い過ぎですが、まぁそんな感じです。

 さて、ここで、最も小さい、細胞からできている生物ってなんだろう、と考えてみます

 ヒトというのは実は37兆個ぐらいの細胞でできているんじゃないかと見積もる研究があります (▶ EvaBianconi et al. 2013, Annals of Human Biology, 40:6, 463-471.)

 たくさんですね。一方、最小数の細胞からなる「生物」は何か、といいますと、これは細菌や真菌、古細菌などで、これは1個の細胞からなっています


 ですから、こういったものを「単細胞」生物というのですね




 この図は菌の概要ですが、これが一つの細胞です。細胞から毛のようなものも生えていますね。

 さて、細胞というのはある意味で区切られた装置です。エネルギーを変換し、なんらかの機能を担い、自分を維持し、分裂して増える
 それを実施するために細胞内にはいろいろな仕組みが備わっています





 上の図の左側 Eukaryote というのは「真核生物」といって、「核」nucleus というものを持っている細胞の図です。我々ヒトの細胞もこれなんですね。
 右側は Prokaryote 「原核生物」 といって、明確に仕切られた核はもっていない細胞で、細菌などがこれにあたります


 細胞はいろいろな仕組みをもっていますが、大事なことは、遺伝情報をDNAに書き込んで保持していること、エネルギーを変換する装置をもっていること、自分を維持するために自分の部品を作ったり壊したりする装置をもっていることなどがあげられます。

 さて長ったらしく、生物ってなんなの、という話から始めてしまい、結局なんとなく細胞という「単位」がその定義をみたしてくるのかな、というところまで見てきました。



ウイルスってどんなもの?



 ようやくですが、ウイルスに入りたいと思います。

 まず言葉から。初めに言葉ありきです。
 
  ウイルス(英語: virus)はラテン語のvirus が由来です。この言葉は「毒液」といった意味合いですね。

 日本語になってからはかなりいろんな書き方が歴史的にはされていて、ウイルス、ウィルス、バイラス、ビールスなどと書かれてきました。しかし、1953年に日本ウイルス学会が設立され、今では「ウイルス」(すべて大文字のカタカナ)が正式名称になっているんですね。




 ウイルスって、どんなものなのか。ウイルスの概念図はこんな感じです。一見細胞と同じ感じに見えるかもしれないですね。周りと隔てられていて、中に遺伝物質がある。





 形はいろいろあります。上の模式図に示したような形のものが有名で、多面体みたいなもの、らせん状のもの、まるで宇宙船のようなもの、などいろいろです。

 重要なことは、繰り返しになりますが、これらの形の中に、それぞれ設計図である遺伝情報をいれているということがあげられます。細胞をもっている生物と一緒ですね。

 遺伝情報の保持の仕方は、細胞を持っている生物とは違うところがあります。それは、かならずしもDNAに情報を書き込んでいるのではなく、RNAという別の物質に遺伝を書き込んでいることもある、というところです。

 では細胞との違いはなんなのか…。遺伝子がRNAのこともあるということ以外に違いはあるでしょうか。あります。

 ウイルスはまず「大きさが全然違います」。

 細胞というのは、菌であれば小さくて 1μm(マイクロメーター) 程度の大きさです。人の細胞だと5μm以上の大きさです。これは1mmの 1/1000~1/200 程度の大きさですね。

 一方、ウイルスは100nm(ナノメーター)程度のものが多いのです。100nmというのは0.1μmで、1mm1/10000程度の大きさです。細胞の1/10程度の大きさなんですね。

 


 ウイルスのなかでも大きさはいろいろなんですけど、どれもとても小さいんですね。
余談ですが、形はとても「美しい」ものや「面白い」ものが多いですね。



 大きさを書いてみると、Electron microscope、すなわち電子顕微鏡というものを使わないと見えないレベルのものなんですね。



 こんな小さいものなので、細胞にはあるものが「いろいろありません」

 核、ありません。
 エネルギーを変換する装置、ありません。
 自分の成分を作る装置、ありません。
 自分を複製・増やす装置ありません

 …あれれ、これは大変なことですね。


 「生物」を定義するような特徴を保つ装置を持っていないのです。
 遺伝情報と容れ物からなっている、けれど、生物の機能を担えません。

 そう、「ウイルスとはそういうもの」なのです。

 DNAまたはRNAという遺伝情報を書き込んだ成分と、それを入れる容れ物、そして少数の種類のタンパク質をもつ小さな小さな塊、それがウイルスです。

 ウイルスは生物か…上でラフに考えたラフな定義のようなものからいうと、ノーです。決定的なのは、「自分では増えられない」という点とも言えます。



ウイルスの増え方


 では、ウイルスはどうやって「自分を増やす」のでしょう。簡単に答えからいうと、細胞に入り込んで「機能をのっとって」、自分を増やしてもらうのです。侵入した細胞の装置をお借りする。

 そう、ウイルスというのは他者(細胞)依存的に自分を増やすんですね。

 ですから、ウイルスはただの情報の塊のような面もあるんですが、細胞を乗っ取る機能はもっている、ということになります。

 自分を自分の装置だけでは増やせないのはウイルスだけ。というとウソになって、じつは細菌にちかいリケッチアというのも他の細胞なしでは自分を増やせません。これは今回は余談ですが。

 細かいことは省きますが、ウイルスは増えてはいくわけです。自分自身でではなく、細胞も持ちませんが。そういう意味ではまるで「生物」のごとくふるまう面もありますね。そして、生物の進化や生物のもっている仕組みにはウイルスが大きくかかわってもいます。

 なので、ウイルスというのは、生物と非生物の非常に難しいはざまの立ち位置にあるような、そういう存在ということもできるんですね
 「生物学的存在」ということもあります


 ただ、生物の定義を狭めて「非細胞性生物」として位置づけることもあるんですが…。

 なんだか概念的で、哲学的で、つまらーん、眠い話をしてきてしまいました。

 ここからは具体的にウイルスってどんなものがあって、どんな仕組みなのかなということをお話したいと思いますが、その前にひとつ寄り道をします。



ウイルスと細菌(や真菌)の違いと抗生物質


 細菌・真菌というのは細胞からできていました。できているんです。装置をもっているんでしたね。自分を外と分ける膜や壁のようなもの、自分自身をメンテナンスする装置、自分を増やす装置。




 これらの装置のいろいろな部分に作用して、働かなくする薬が、「抗菌薬」「抗真菌薬」であり、ラフに使われる「抗生剤・抗生物質」というものになります。
 これらの、「装置に効く」のです、

 代表的な抗菌薬には、細菌の細胞の壁を壊すもの、細菌がタンパク質をつくるのを止めるもの、細菌の遺伝情報であるDNAが増えるのを防ぐもの、などがあります。

 そして重要なのは、ヒトの装置には影響しない/しにくいこと。細菌は原核生物なので、原核生物にだけ作用するものであればいいのですが、カビの仲間はヒトと同じような細胞からなる真核生物なのですこし難しいのですが、そういった選択性のある物質が薬になっているんですね。

 ですから、抗菌薬は菌の細胞の装置を止める薬なわけで、「ウイルスには効きません」。ウイルスは装置を持ちませんし、ヒトに病気を起こすウイルスは、「ヒトの装置を乗っ取ります」。抗菌薬はヒトの装置には作用しないのでした。

 さて、「風邪」というのはライノウイルスなどのウイルスによっておこる(一般感冒・普通感冒と呼ばれる風邪ですね)んですね。
 
 ですから「抗菌薬」「(ある意味の)抗生物質」はウイルスには効かないので、風邪には効きません。これは重要なことで、原理的に効かないのです。気休めにもならない

 抗生剤を、効かない風邪などに乱用すると、細菌は薬剤に対して耐性というものを持ってしまいます。この辺はまたいつかお話しますが、薬剤耐性(AMR)というんですね。
 これは大変な問題なので、「抗生剤を風邪につかってはいけません」。

 抗生剤の乱用の問題や、ウイルスには効かないよ、という話については以下がとってもよいです。

 ●AMR臨床リファレンスセンターのホームページ(http://amr.ncgm.go.jp/)
 ●FNN PRIME ブログにもよい記事があります
  「4割が勘違い「抗生物質は風邪に効く」…危険な副作用に注意



ウイルスの発見


 さて、戻ります戻ります。大回りしました。どこまでいったかというと、ウイルスって情報と形だけあるようなものなんだよなぁ、というところ。

 ウイルスについてちょっと見つかった経緯を書きます。

 ウイルスはとても小さいのでした。細菌よりずっと。細菌は光学顕微鏡で見えますので、顕微鏡が発明されたのち、多くの感染症で見つかりました。

 これは1674年にレーウェンフックという人が見つけたのですね。そして、1860年にはパスツールという人が細菌のはたらきの研究をし、1876年にはコッホが病原体としての細菌の意義を明らかにしています。
 
 そしてたくさん研究がされて、感染症の多くはまずは細菌でおこっているんだ!ということが明らかになったのです。これは顕微鏡を使っているんですね。

 ところが1892年になるとイワノフスキーという人が、顕微鏡では見えないうえに、濾過器という焼き物のフィルターを通して細菌を除いた後の液をつかっても、タバコモザイク病という病気が植物から植物へうつることを見つけたのです。

 つまり、細菌よりずっと小さい何か、が感染症の原因になっているのではないか、と考えられたんですね。さらに1898年には口蹄疫についても同様に、濾過器を通しても感染性があることがわかり、filterable virus」(濾過性病原体)と名付けられました

 ベイリングという研究者は「Contagium vivum fluidum」(生命を持つ感染性のある液体)と名付けています。

 この、濾過性病原体は、より小さな細菌という説と、分子であるという説がありましたが、1935年にスタンリーがタバコモザイクウイルスを結晶化し、電子顕微鏡で観察することに成功しました。これはノーベル賞(1946)につながります。

 始めはこの結晶はタンパク質だけでできていると考えられていましたが、翌年1936年には、RNAも含まれていることも分かりました。ただ、このころはまだ遺伝子がRNAにあることはわかっていなかったんですね。

 1952年になって、ファージというウイルスの一種ではDNAが遺伝をつかさどることがわかり、そして、ウイルスへの理解と同時にDNAが遺伝物質であることがわかったのです。

 こういう経緯で、ウイルスは発見され、そして少しずつ理解されたのですね。ですから細菌とは全く違うのです。

 さて、ではもう一度ウイルスの特徴を復習します。

  1. 細胞はない。核酸(DNAまたはRNA)を遺伝情報として入れた形をもつ。
  2. 自分自身では増殖できない。細胞を利用する。
  3. エネルギー変換をすることはできない。

 こういった特徴があるのでした。これ以外にも遺伝の保持の仕方や増殖の仕方などで。生物との違いもありますが、割愛します。


ウイルスの分類


 さて、ウイルスについては構造や仕組みなど説明すべきことはたくさんあるのですが、今回はたくさん触れるのはあれなので、ウイルスの分類や実際にあるウイルスってどんなものなのかだけをラフに見ていきたいと思います。

 ウイルスを分類している国際組織が実はあります。International Committee on Taxonomy of Viruses (ICTV) というところで、日本語では「国際ウイルス分類委員会」というのです(https://talk.ictvonline.org/)

 このICTV のサイトに、ほぼすべての既知のウイルスの学名のリストと分類(https://talk.ictvonline.org/taxonomy/)が公開されています。
 (Excelリストもあります https://talk.ictvonline.org/files/master-species-lists/)

 うーん!複雑かつ細かく、膨大…これは理解が難しい…。となりますが、実はこれはきれいに群と階層で分けていて、かつ、そのもとになった考え方というか分類があるのです。

 それを、ボルチモア分類といいます。

 ウイルスは遺伝情報をDNAまたはRNAに書き込んで持っているのでした。

 ボルチモア分類というのは、この遺伝子情報を保持している核酸(DNAまたはRNA)の種類と、その鎖が1本であるか2本であるか、さらに、遺伝子の書き込まれている方向がどっちの方向であるか、で分類するのです。

 具体的には、①2本鎖DNA、②1本鎖DNA、③2本鎖RNA、④1本鎖RNA +鎖、⑤1本鎖RNA -鎖、⑥1本鎖RNA逆転写、⑦2本鎖DNA逆転写 でわけるんです




 このように分けて考え、分けたのちに、似たものをまとめて生物のものと似た学名を付けています。すなわち、目 (order; -virales)>科 (family; -viridae)>亜科 (subfamily; -virinae)>属 (genus; -virus)>種 (species) という階層にしているのですね。




 ちょっとだけ具体例を表にだします。下の図です。

 ds (= double strand = 2本鎖) DNA 中にはヘルペスウイルスやパピローマウイルスがありますね(一番左)。パピローマウイルスは子宮頸癌の原因になります。二本鎖DNAを遺伝情報に持っているのですね。



 ss(=single strand=一本鎖)RNAウイルスで遺伝情報が書き込まれている方向が(-)には Orthomyxoviridae = オルトミクソウイルス科というのがありますね。これはインフルエンザウイルスがここに含まれています。

 あ、脱線しますが、「インフルエンザ菌」(Haemophilus influenzae)という「細菌」もいるので注意です。これはインフルエンザの患者から見つかった菌ですが、インフルエンザを起こすのではありません。名前だけが残ってしまったのでややこしいですが。今は触れませんが、インフルエンザウイルスとは全く違うので注意です。

 さて、戻りますね。ウイルスの分類については、まぁこんな感じなんですが、…とにかく細かすぎる!難しすぎる!そうですね。この用語・分類の最新バージョンは論文で読めますので、興味のある方だけ踏み込んでもらいましょう!


 さて、なんとなく、わかっていただければいいのです。ウイルスは「細胞にあるような種々の機能は持っていない」のですが、「遺伝情報は核酸(DNAまたはRNA)に保持しています」。その「核酸の種類で分類」し、「そののちにさらに細かく分けている」、そういうことなんですね。


 ウイルスはいろいろな核酸の持ち方をしているのですが、細胞を乗っ取った後には、そこからメッセンジャーRNA (mRNA) というものを写し取って(一部はそのままmRNAとして機能して)、タンパク質を作り出します。





 そして、そのタンパク質をつかって、さまざまな機能を発揮するのです。

 細胞を乗っ取るのも実はそうですし、自分たちを増やしたり、自分たちを潜ませたり、細胞を黙らせたりいろいろです。(実際にはタンパク質だけではなく miRNA なども使いますので単純ではありません)

 さて、今日は導入の概要だけでおわります。ウイルスの概要でしたね。



今日のまとめ

 
 今日の話をまとめます。「生物の最小単位は細胞」と言っていいのでした。細菌も細胞からなり、自分で増えて自分で代謝をします。一方、ウイルスは細胞よりはるかに小さく、そういった機能を欠いているところがほとんどで、生物といっていいのかわかりません。

 細菌の細胞の装置に対して用いる薬が「抗生物質」でした。細胞だから効くのですね。ウイルスには細胞がありませんので、抗生物質は効かないのでした。

 ウイルスの分類はどうやって行うのか、というと、ウイルスの遺伝情報が書き込まれている核酸(DNAまたはRNA)の種類によってまずわけるのでした。これがウイルスの分類の基本でした。

 というわけで、今回はあくまでも導入でしたが、少しずつまたウイルスについてもお話をしていきたいと思います。







気が向きましたら応援クリックをお願いします!↓
  

note に 医学・医療関係の記事をまとめています

病理の話題は別ブログにまとめています

研究関係の話題は別ブログにまとめています

その他のブログ一覧はこちら

投げ銭・ご寄付などのリンク
もしよい情報などがありましたら
▶ リンク