DLBCL の Hans の基準
血液病理の領域、リンパ腫の診断について1つ。
悪性リンパ腫の一種である びまん性大細胞性リンパ腫 - diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL) はB細胞性で、細胞が大型を呈するリンパ腫であるが、分類上は「B細胞性」の「大きい細胞からなる」「その他の」リンパ腫という扱いになり、ある意味でゴミ箱 (waste basket) 診断項目ともいえる部分がある。
以前は形態から centroblastic と immunoblastic などと分けていたが、診断の再現性や予後との相関が不明であり現在では用いないのがよい。
現在はいくつかの分類があるが、実践的で実用的な分類を紹介する
DLBCL を亜分類して、予後との相関を見た論文がある (Hans CP et al. Blood 2004, PMID: 14504078,
PubMed,
Blood) 。
論文では、DLBCLについて、DNA array を用いて発現プロファイル (GEP)を解析し、その特徴から、腫瘍発症のカウンターパートの細胞との比較で、germinal center B cell-like (GCB)であるか、そうではない(non-GCB)かに分けると予後が層別化されることが示されている。
GCBが予後良好であり、non-GCBが予後不良である (R-CHOP療法での3年無増悪生存率がGCB は 75%、non-GCB は 40%)。
この論文はGEPを用いているが、実際にすべての症例にマイクロアレイやシークエンスを行うことは現実的ではない。そこで、免疫染色でDLBCLのGEPを代用させる分類方法も記載されている。これが Hans の基準 (Hans classifier) である。
基準は免疫染色を用い、CD10、BCL6、MUM1 (IRF-4) の3種の抗原の発現を確認する。陽性とするカットオフ値は30 %としている。基準は下図の通り。
言葉で表せば、
・CD10陽性 → Germinal center B cell-like (GCB)
・CD10陰性かつBCL6陰性 → non-GCB
・CD10陰性かつBCL6陽性 → MUM1陽性でnon-GCB
MUM1陰性でGCB
となる。
DLBCLを分ける基準はほかに、Changの分類(Chang
et al. Am J Surg Pathol 2004;28:464-70) や Muris の分類 (CD10 と MUM1 でGCB と Activated B cell-like (ABC)を分ける (Muris
et al. J Pathol 2006.PMID: 16400625,
PubMed) が知られているが、Hans の分類は簡便性と再現性において実務には優れていると考えられる。
その他、CD5-positive DLBCL は予後が不良であることも明らかになっている (Yamaguchi
et al. De novo CD5-positive diffuse large B-cell lymphoma: clinical characteristics and therapeutic outcome Br J Haematol 1999;105、など)。