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2018年11月28日水曜日

【情報】病理学会主導の胃生検病理診断AIの実証実験が開始されるとのこと

 病理診断とAI の話題です。


Fig.1 JP-AID のページより


 日経メディカル(2018/11/26) に「胃生検病理診断用のAI、診療現場での検証を開始」という記事が出ていました(会員でないと読めないかもしれません)。

 日本病理学会秋季大会が行われていましたが、その中で2018年11月22日に記者会見が行われました。
 病理学会がAMED事業として開発を行っていた、病理診断用のAI技術が実用化レベルに達し、福島・徳島県の診療現場で評価実験が始まるとのことです。

 この事業は、AMEDに採択された「AI等の利活用を見据えた病理組織デジタル画像(P-WSI)の収集基盤整備と病理支援システム開発」という課題であり、事業名は「Japan Pathology Artificial Intelligence Diagnostics Project(JP-AID)」と言います。


 今回、学会前にプレスリリースで予告がされていました。
  ▶ JP-AIDのページ プレスリリース(平成30年11月9日)

実用化レベルに達した胃生検病理診断AIシステムが完成いたしましたので,ご報告の機会を設けました.広域ICT基板を用いた福島・徳島の地域病理診断ネットワークで,このAIエンジンを実装させる準備も重ねて進めています.

 上記日経の記事によりますと、この課題で開発した胃癌診断用のAIは、996例の診断結果付き胃生検データをもとにディープラーニングをしたようです。
 検証で、感度 93.3%、特異度 73.5%であり、病理医の診断とAIの判定の不一致率は16.2%であったとのこと。

 このシステムを用いて、12月中に福島県では実験を開始し、今年度中に徳島県でも開始される予定とのこと。

 プロジェクトの目標として現在、病理医とAIとの判定不一致率1割以下を目指しているそうです。

 どんどん技術が進んでいくといいですね。楽しみです。


● 追加情報

 読売新聞にも記事がでていました。
 胃がん診断、AIが手助け…病理医の負担減

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2018年8月16日木曜日

【書籍紹介】病理像+内視鏡・CT・MRIで一目でわかる! 臨床医が知っておきたい消化器病理の見かたのコツ





 【書名】病理像+内視鏡・CT・MRIで一目でわかる! 臨床医が知っておきたい消化器病理の見かたのコツ
 【著者】福嶋敬宜
 【出版社】羊土社
 【リンク】Amazon 楽天ブックス 7net honto e-hon
      紀伊國屋書店 図書館


内容紹介より引用



見かたのコツを知れば,病理がもっと身近になる! 臨床医が押さえておきたい75の症例を取り上げ,病理像の見かたを1症例2ページで解説.内視鏡像など臨床情報も掲載.消化器病理の重要ポイントを手軽に学べます!

臨床医の素朴なギモンをふまえ、病理像の見かたのコツを病理医が伝授。症例をイメージしやすいよう、内視鏡像、CT・MRI、血液検査値など臨床情報も掲載。

非常にわかりやすくきれいな写真を用いた解説集


 福嶋先生、本出しまくっとるなぁ…。臨床医のための病理本、いいねぇ…。
 そして、羊土社のシリーズ、って、これがまたいいんだよねぇ…というわけで。 

 羊土社のホームページで内容をちらっとみることができます(▶ ここ)が、見開きで一疾患、臨床情報と内視鏡像、画像所見などとともに病理像が大きく提示される。
 右側において、病理の詳細な絵解きと解説、ポイントが述べられる。

 非常によくまとまっており、疾患の選択もよい。基本となる正常構造の解説も章のはじめにコンパクトになされていて有用である。

 臨床医向けの消化管病理のとっかかりとしては良い本である。
 病理医でもレジデントまでの若いひとは読み通しておくと臨床医との意思疎通の役に立つこと間違いなし。

 よい!★★★★★ (5/5)。







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2018年8月12日日曜日

GISTのリスク分類


GISTのリスク分類について


Fig.1 GIST(HE) 


 Gastrointestinal stromal tumor (GIST, 消化管間質腫瘍) の病理診断においては、リスク分類が求められる。なぜなら、リスク分類によって、予後予測に役立つだけでなく、術後化学療法の適応の決定に資するからである。

 GISTの悪性度を細胞形態のみで判断することは困難である。
 唯一、他臓器への転移があれば悪性であると断定が可能である。
 よって転移がない場合には、良性/悪性と診断するのではなく、リスク分類(高、中、低)を行う。

 リスク分類は主として2つが用いられている。これらの分類はいずれも、腫瘍径と細胞増殖能の指標を組み合わせてつくられている。これらの分類はいずれも、腫瘍径と細胞増殖能の指標を組み合わせてつくられている。これら2つのリスク分類は GIST診療ガイドラインに採用されている。

GIST診療ガイドライン 2014年4月改訂(第3版): 構造化抄録CD-ROM付

● Fletcher 分類


 最も汎用されているリスク分類は Fletcher 分類 (Fletcher CD et al: Hum Pathol 33: 459-465, 2002, PMID: 12094370)で、この分類は腫瘍径と核分裂像数を組み合わせたものである。この分類はまたGIST診療ガイドラインにも採用されている。




 2項目のみで評価が可能であるが、原発臓器によるリスクの違いが取り入れられていない。また、Ki67(MIB-1) 標識率や壊死の有無も組み入れられてはいない。


 Miettinen 分類




 GISTは腫瘍発生臓器によって予後が異なることが示されている。そこで、これらを取り入れた Miettinen 分類 (Miettinen M et al: Semin Diagn Pathol 23: 70-83, 2006, PMID: 17193820)が現在では使われるようになりつつある。GIST診療ガイドラインにもこの分類が取り入れられている。







● リスク分類を行う上での注意事項


 核分裂像に関しては対物40倍視野で核分裂の数を調べ、50視野を合計して(/50HPF)算出することとなっているが、視野数によって結果が異なるので、視野数を明記することが必要である。


● その他の予後予測因子



 臨床的な予後予測因子としては、腫瘍径(≧5cm)、周囲臓器への浸潤、血行性転移、腹膜播種、腫瘍破裂、不完全切除などがあり、病理においては核分裂像数(≧5/50HPF or ≧10/50HPF)、腫瘍細胞の多形性、壊死・出血の有無などが挙げられている。遺伝子的にはc-kitPDGFRAPDGFRBなどの遺伝子の変異が検討されている。



● 文献


1)Fletcher CD et al: Diagnosis of gastrointestinal stromal tumors: a consensus approach. Hum Pathol 33: 459-465, 2002

2)Miettinen M, Lasota J: Gastrointestinal stromal tumors: pathology and prognosis at different sites. Semin Diagn Pathol 23: 70-83, 2006


● 参考になるサイト