2020年1月31日金曜日

たんたんとお仕事

 今日はちょっと朝方寒かったベセスダです。


Fig.1 今朝のベセスダ

 新型コロナウイルスの話題で持ち切りですし、動きも激しいですが、情報は出揃ってきているように思いますね。落ち着いて冷静に感染対策をして生活することが大事だなと思いながら見ています。

 今日は普通にたんたんと実験をする日です…。ちょっと書かないといけない書類もあるのですが、とりあえずはまずは実験実験…。
 


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2020年1月30日木曜日

ばたばたしている

 今日は快晴のベセスダです。朝は曇天ですが昼から晴れ上がり。

Fig.1 朝は曇天でした

 猛烈にばたばたとしています。
 実験が結構込み入っていること、HPVVについての記事を書いたことへの反響の対応、コロナウイルスの情報収集したり…なんだか息つく暇がありません。

 いろいろブログに書こうと思うことも溜まっているものの…うまく時間は確保できず…大変大変。実験もタイムコースなので振り回されています…。

 ちょっと落ち着くのには週末までかかるかなぁ…。なんとか乗り切りたいと思います。

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2020年1月29日水曜日

BuzzFeed Japan Medical への連載4回目

 一昨日から公開をはじめていただいております HPVV、子宮頸癌ワクチンに関する連載の第四回(最終回)が公開されました。

 ▶ メディア、政治、行政、医療者の責任は? 日本でなぜHPVワクチンはうたれなくなったのか

 連載四回の総括です。
 早速反ワクチンの頓珍漢なコメントがついていますが、それもお楽しみください。
 よろしくお願いいたします。


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2020年1月28日火曜日

BuzzFeed Japan Medical への連載3回目

 一昨日から公開をはじめていただいております HPVV、子宮頸癌ワクチンに関する連載の第三回が公開されました。

 ▶ HPVワクチンをめぐる12個の作り話をファクトチェック 「HANSは?」「男子は必要ないの?」(後編)


 HPVV にまつわる12個の噂話を二回にかけて検証しています。
 できるだけ文献を付けるようにしましたので、ぜひ文献まで見てみなさんに考えてみていただきたいと思います。

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2020年1月27日月曜日

BuzzFeed Japan Medical への連載2回目

 昨日から公開をはじめていただいております HPVV、子宮頸癌ワクチンに関する連載の第二回が公開されました。

 ▶ HPVワクチンをめぐる12個の作り話をファクトチェック 「危険?」「効果がない?」(前編)


 HPVV にまつわる12個の噂話、をまずは二回かけて検証します。
 できるだけ文献を付けるようにしましたので、ぜひ文献まで見てみなさんに考えてみていただきたいと思います。

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2020年1月26日日曜日

BuzzFeed Japan Medical に4回連載します

 昨日から BuzzFeed Japan Medical に、HPVワクチンについての 4回連載を始めました。
 できるだけ初歩的なところから HPVワクチンに関する説明と、誤解を解く話を書いたつもりです。
 初回はこちら、一読いただけるとありがたいです。




 明日以降の連載では、HPVワクチンについての作り話、簡単にいえばデマを検証していき、最後にちょっと現状について論考してみたいなと思っています。

 HPVワクチンについての作り話は非常に多いのですが、検討して、というかしっかりつぶす記事が日本語ではあまりなかったので書いてみました。
 
 どうぞよろしくお願いいたします。




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2020年1月25日土曜日

実験をして、実験計画を立てる

 今日は暖かいベセスダです。10℃ぐらいあります。
 久々に気が緩む感じ…。


Fig.1 今朝の空


 今日は実験を普通にしつつ、新しい実験計画を考えつつ、合間に研究費の申請書をかいたりなんかしています。

 新コロナウイルスについて簡単にまとめているブログ記事 のアクセスが 4,000 近くになりました。情報が大量に流れていますが、肝心な情報は WHO や CDC、日本では 厚労省や感染症研究所から出てきていますね。
 変な情報には踊らされず冷静に吟味したいところですね。

 
 さて、今日は夜は交流会へお出かけします。寒くなくてよかった…。
 



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2020年1月24日金曜日

寒い日が続いています

 今日もちょっと寒めのベセスダです。朝は-5℃ぐらい。
 ここのところいつも朝は空がきれいで飛行機雲がよく見えます。


Fig.1 今朝の空


 今日は実験をする一日です。毎日そうなんですが、特に実験以外予定のない日。
 新しい実験をするのですが、その準備で計算をしないといけません。計算が苦手…。
 いつも計算するときには頭を抱えています。

 いろいろばたばたしていますが、今日もたんたんといきたいと思います。

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2020年1月23日木曜日

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2(2019-nCoV))による COVID-19 について

新型コロナウイルスに関する簡単な解説とまとめ記事


 ※ 本記事は更新していきます。最終更新 2020.2.20

 昨年(2019年)12月31日に武漢市が発表した原因不明の肺炎の起因ウイルスは、新しいコロナウイルスであることが中国当局によって確認され(2020年1月9日)、世界保健機構(WHO) は新型コロナウイルスに 2019-nCoV という暫定的な名前を付けました(1月10日)。

 その後、2月11日には 、WHOは引き起こされる疾患の正式名称COVID-19 とし、 ウイルスについては International Committee on Taxonomy of Viruses は、severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) を正式名称としました。

 日本では1月28日には新型コロナウイルスは、感染症法に基づく「指定感染症」・検疫法の「検疫感染症」に指定する政令が閣議決定されています。
 (指定感染症はここに詳しい ▶ 指定感染症とは|感染症法の解説

 これまでに中国本土で 7.5万人以上の患者が確認され、香港と中国国外(日本、タイ、韓国、台湾、アメリカ、シンガポール、ベトナム、ネパール、フランス、マカオ、オーストラリアなど)でも患者が確認されています。

 一方、対策や検討も進んでおり、武漢をはじめ中国の都市では移動を禁止するなどの措置をとっているところも多いほか、各国でも検査体制は整いつつあります。また、研究の面では、The Lancet 誌、NEJM誌、JAMA誌 などはじめ、複数の雑誌に既に症例の報告やウイルス学的な検討が報告されています(特に中国の研究グループの速度はすさまじいです)。

 ワクチンは現時点でなく、基本的には手洗いなどの一般的な感染対策(飛沫感染対策+接触感染対策)が予防策として重要です。特効薬も現時点でなく(一部HIVへの薬が効いたとの報道もありますがまだはっきりと効果が実証されてはいません)、治療はこれまでに知られているウイルス関連の肺炎に準じた治療などが行われます。

 これまでの経過と、一般的なコロナウイルスに関する話をまじえての、このウイルスに関する情報をこの記事に簡単にまとめていきたいと思います。

 ▶ 厚労省の特設ページに様々な対策や現状 がまとまっています。
 ▶ 国立感染症研究所の特設ページには情報、 
  同じく国立感染症研究所の特設ページには情報 が豊富です。
 ▶ 内閣官房の特設ページ に政府施策などは載っています。
 ▶ WHO シチュエーションレポート
   WHOシチュエーションダッシュボード

 こういった新たな病原体による感染症の流行に対しては、正しい情報(特に公的な情報を複数)を入手し、決してパニックにならず(デマなどにあおられず)、国であっても個人であっても、できることを粛々と行うことが重要です。煽られたり焦ったり、過剰に不安に思ったりせず、デマ・流言飛語に騙されないようにし、情報に注意しつつ、できる感染対策をして、日常を過ごすことが肝要ですね。



コロナウイルスとは






 コロナウイルスはウイルスゲノムとして(+)鎖の1本鎖 RNAをもつウイルスで、ヒトに感染するものが今までに 6種類 知られており、今回発見された 新型コロナウイルス 2019-nCoV は7種類目ということになります。

 既知の 6種類のコロナウイルスのうち、4種類は主にヒトに感染するコロナウイルスでヒトコロナウイルス(Human Coronavirus(HCoV)) と分類されており、名前はそれぞれ、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1 というものです。

 これらの4種類は、いわゆる「風邪」のウイルスで、風邪の10~15%程度、流行期で35%はこれらによるものとも言われています。
 ▶ 国立感染症研究所のページ

 これらのコロナウイルスによる感染症は、多くは軽症ですみますが、時にはインフルエンザ様の高熱などの症状がでることもありえます。ただ、基本は、風邪のウイルス、というものです。
 ▶ 総説としてはこれが非常に良い
  Origin and evolution of pathogenic coronaviruses. 
  Nat Rev Microbiol, 17 (3), 181-192



SARS




 
 さて、残りの 2種類が大きなものです。一つは、コウモリ由来と考えられる、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV、サーズと発音)です。これは2002年に広東省で発生して、かなりの流行になったので覚えておられる方もいると思います。
 ▶ 国立感染症研究所のページ
 ▶ CDCのページ

 SARS は飛沫によりヒトーヒト感染が起こること、致死率も9.6%と高かったこと(775/8,069人)などから感染すると大変であったわけです。これはその後2003年には収束しています。
 ▶ WHOのページ



MERS






 もう一つは中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV、マーズと発音)です。

 これはヒトコブラクダ(フタコブではない!)に風邪を起こすウイルスですが、ヒトにも感染します。2012年にサウジアラビアで発見され、致死率は 34.4% と報告されています。
 ▶ CDCのページ

 MERS は韓国の病院で起こった感染がありましたが、この際に話題になったのは、非常に大量のウイルスを排出して感染を拡大させるスーパースプレッダーというヒトがいることで、1人から186人に感染が広がっています(スーパースプレッダーについては Wiki にも詳しい)。
 ちなみに、この MERS-CoV は細胞に入り込むときに DPP-4 という分子を使います。そう、糖尿病治療薬のターゲットのDPP-4ですね。なので、実験上、DPP-4 阻害薬をかませるとウイルスの感染が抑えられたりします。



ウイルス学的にコロナウイルスとは





 このように、これらヒトコロナウイルス、ヒトに感染する6種類と、今回の新型コロナウイルス の他にもコロナウイルスはあり、それらは動物に感染しているため動物コロナウイルスと言います。動物に様々な疾患を起こすのです(▶ 英語版 Wikipedia が詳しい)。

 コロナウイルスはいずれもウイルス学的にはプラス鎖の一本鎖RNAをゲノムとするウイルスで、大きさは 100nm ぐらいの球形、表面の突起(スパイクタンパクという成分)が王冠や太陽のフレアのように見えることから corona と名付けられたようです。
 このスパイクタンパク質はインフルエンザの突起であるHA、NAなどとは別物です。
 
 ウイルスの表面はエンベロープと呼ばれる脂質が覆っています。このエンベロープがあるということは、一般にアルコール消毒や界面活性剤(石鹸など)に弱いということになります。よって、コロナウイルスはアルコール殺菌が可能で、石鹸などに弱いといえます

 遺伝学的には α、β、γ、δ の 4グループに分かれ、SARS、MERS は βコロナウイルスということになります。今回の 新型コロナウイルスもβコロナウイルスです。



新型コロナウイルス関連の事項を時系列で




情報はWHOのサイトに詳しい


 昨年(2019年)の12月31日に武漢市で原因不明の肺炎27人を発表したのが今回の流行の端緒情報でした(武漢市の衛生健康委員会の発表情報)。その後、本年1月5日には患者が59人に増加したと当局が発表し、7日には香港ではこの肺炎を疾病予防制御法の指定にしています。
 
 9日になり、中国武漢当局によって、新型の肺炎から、新型コロナウイルスが検出されてSARS や MERS は否定されたことが明らかになりました。同日、WHOは新型コロナウイルスについて声明を発表(WHO Statement)、翌日には新型コロナウイルスの名称を 2019-nCoV と命名しています(Surveillance case definitions)。

 このウイルスの発生源は中国武漢の水産市場との報道がなされ、1月26日には水産市場から得られたサンプルからウイルスが検出されたとの報道もなされています。

 その後、感染は拡大を広げており、13日にはタイで、16日には武漢から帰国した日本での症例が確認され(国立感染症研究所による検索)、20日には韓国、21日には台湾と米国でもそれぞれ1名の症例が確認され、その後もアメリカ、フランス、オーストラリアなどでも患者が発生しています。

 WHOは22日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)にあたるかどうかを専門家委員会で検討した結果、22日、23日ともにあたらないとしましたが、現地時間30日に開かれた緊急委員会で、PHEIC を宣言しました
 ▶ Statement on the second meeting of the International 
  Health Regulations (2005) Emergency Committee 
  regarding the outbreak of novel coronavirus (2019-nCoV)

 2月17日現在、中国において74,280例、2,006例の死亡が、中国外では924症例、死亡は3例であることが明らかになっています(WHOシチュエーションレポートJHUのページChina CDC より)。WHOのリスクアセスメントは、中国で Very High、地域レベルで High、世界レベルで High となっています。
 WHOのモデリングによる暫定指標も公表されており、潜伏期間中央値は5-6日、シリアルインターバルは4.8日、感染者の推定致死率は 0.3-1% とのことです。

 1月28日には新型コロナウイルスは、感染症法に基づく「指定感染症」・検疫法の「検疫感染症」に指定する政令が閣議決定されています。
 ▶ 【新型肺炎】指定感染症になるとどうなる?
  Yahoo!ニュース個人 忽那賢志 医師
 
 日本国内では、武漢からのツアー客をのせていたバス運転手が感染したとのことで、国内での感染があり、その後同乗していたガイドへの感染も判明しました。また、武漢から政府のチャーター機で帰国した人のなかにも感染者が見つかったり、寄港しているクルーザーにも60人以上の感染者がでたりしています。

 これらの現状は早速論文にもなっています。
 ▶  Coronaviruses: Genome Structure, Replication, and Pathogenesis
  J Med Virol 2020 Jan 22.
 ▶ The Continuing 2019-nCoV Epidemic Threat of 
  Novel Coronaviruses to Global Health 
  - The Latest 2019 Novel Coronavirus Outbreak in Wuhan, China.
  Int J Infect Dis, 91, 264-266 2020 Jan 14.
 ▶ Outbreak of Pneumonia of Unknown Etiology in Wuhan China: 
  The Mystery and the Miracle
   J Med Virol  2020 Jan 16.
 ▶ Functional assessment of cell entry and receptor usage
  for lineage B β-coronaviruses, including 2019-nCoV
 ▶ The Extent of Transmission of Novel Coronavirus
  in Wuhan, China, 2020
  J. Clin. Med. 2020, 9(2), 330



新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の特徴



 新型コロナウイルスについてわかっていることを簡単にまとめておきます。

 まず、このウイルスは SARS-CoV 近縁で、コウモリに感染する βコロナウイルス近縁のβコロナウイルス、sarbecovirus 亜属に属するウイルスであることが分かっています(The Lancet January 24, 2020 https://doi.org/10.1016/ S0140-6736(20)30154-9
 ▶ Phylogenetic Analysis Shows Novel Wuhan Coronavirus Clusters with SARS


Genbank リファレンスシークエンスを図示



 ゲノム情報はすでに、中国当局や各国の衛生当局からWHOに提供され、GenBankGenbank には一覧のページも)GISAIDにも公開されています(同定の過程については NEJM 論文に詳細な記述があり、Illumina と nanopore による sequencing で全配列を決定したとのこと)。


Genbank




GISAID


 宿主である動物は現時点では不明で、武漢の水産市場からひろがった可能性が考えられています。

 感染の形態は、ヒトーヒト感染が起こるとWHOの専門家委員会は1月23日のステートメントで発表。当初その多くは家族内感染と医療従事者であったようです。飛沫感染・空気感染かは未だ不明ですが、コロナウイルスであれば飛沫感染が疑わしいとは考えられます。また、NEJMの報告などでは、糞便中にもコロナウイルスが認められ、糞口感染もありうると考えられています。WHOやCDC、イギリスでは医療従事者は空気感染対策をとることを勧めており、中国からはエアロゾル感染をするという主張が出ています。
 参考 ▶ 新型コロナ「エアロゾル感染を確認。要するに空気感染」は誤り。ネットで不安と誤解が拡散

 基本再生産数 R0の推定値はプレリミナリーな報告として同ステートメントでは 1.4-2.5 とのこと(Nextstrain.org によると 1.5-3.5と見積もり)。また、武漢では四次感染もあったと報告しています。

 致死率や病毒性については1月23日時点では、報告症例の約25%が重症であるということ、死亡例はほとんどが基礎疾患を持っていたということ、致死率は4%程度(その後低下中(感染者数が増えているため))であること(ただし分母が重症者を主体とする報告であり、今後も流動することには注意)はWHOより発表されていますが、あらたに出たThe Lancet と NEJM の論文でその詳細が明らかになりました(次の項目でまとめます)。

 感染は症状なく起こることもあり、発症者には基礎疾患がないこともあるようです。また、入院症例を検討した The Lancet のはじめの報告では、発症者は全員が肺炎を発症し、多くは熱があり、咳が75%、倦怠感・疲労が44%、一部では頭痛と下痢などが確認されています。症状は軽症から重症まであるようです。


 感染の広がりについては、Imperial Cllege London MRCセンターによる数理モデルでの検討では、武漢において1月12日までに 1,723人 (95%CI 427~4471)程度の発症としていましたが、1月25日にはさらにアップデートされ、基本再生産数 1.5-3.5、5000人から最悪数万まで感染は広がっている可能性はあるとしており、北海道大学の西浦氏のグループからの新しい論文では、5,502 症例 (95% CI 3027~ 9057) 程度ではないかという推測もされています。

 The Lancet の論文では1月25日時点で 武漢だけで患者数は 75,815 人程度と推定しています。実際にはすでに発症者が2万人をこえており、他の推測でも10-35万人程度の感染者がいるのではないかとするものもあります。

 ウイルスの生物学的特徴はまだ不明なことが多いですが、NIAID の研究者によって、ACE2 という分子がヒト細胞への感染の際の受容体となっていることが確認されたと報告があり、これをターゲットとした抗体なども検討されています。

 さらに中国科学院上海药物研究所によると、この新型コロナウイルスにコードされている Mpro 蛋白 の構造をX線解析をもちいてすでに決定したとのことです(2月5日にはPDBに公開されました)。このタンパク質の構造をもとに作用する薬をスクリーニングしたところ、30種の化合物に対してMpro蛋白の阻害活性が認められたとのことでした。12種は HIV の治療薬であるとのことであり、すでにHIV治療薬(ロピナビルとリトナビルの配合剤であるカレトラ🄬)を用いたオープンラベルの治験もスタートしており、治療にも用いられ始めています。その他、ORF1abと呼ばれるタンパクなど、いくつかのタンパクについてもすでにターゲットとなる低分子化合物の薬が検索されています。
 ウイルスも分離されており、すでに改変 Vero 細胞などを用いて、薬剤のスクリーニングも行われており、抗ウイルス薬やクロロキンなどに in vitro での効果がありそうであるという論文も発表されています。

 また、査読のないプレプリントという報告において、この新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に4か所の挿入配列が見つかり、それが HIV の gp120、Gag にもみられる配列に似ているというものがありました。これについては実際に挿入部位はありますが、HIVのタンパクとの相同性のある部分はごくわずかであり、HIVと類似のタンパクがあるというわけではありません。HIVとこのウイルスは全く異なり、HIVに対する薬がここに効くということでも、HIVのような特徴、つまり免疫不全を引き起こすなどの機能、をこのウイルスが持つわけでもありません
 このプレプリントは、書き方がやや陰謀説的な部分があり著者たちが撤回しています。

 ウイルスの由来については、遺伝配列は上記のようにコウモリのコロナウイルスに近縁であることがわかっています(Nextstrain.org のここにも詳しい)が、自然宿主はヘビではないかという意見もあったようですが 実際には、コウモリが由来である可能性が高いという論文が nature に出ました。

 この 2019-nCoV の特徴がわかってきたこともあり、さっそくワクチン開発も始まっています(新型コロナウイルスに対するワクチン開発を進めます 厚労省)。薬剤スクリーニングなども行われている状況であり、中国では抗HIV薬(SARSに効き目があった)で治験も開始、治療には実際カレトラ🄬が投入されています。
 日本でも国立国際医療研究センター病院において患者に対してHIV治療薬を使用している、と大曲医師が毎日新聞のインタビューに答えています。



新型コロナウイルスによる患者の特徴


 The Lancet、NEJM、JAMA の論文などにより患者の特徴が明らかになってきています。


・男性73%、女性27
・年齢中央値が49.0 IQR 41.0-58.0
基礎疾患がある人が32 
 (糖尿病20%、高血圧15%、心臓血管疾患15%)
・華南海鮮市場へ曝露した人 66
・一家族のクラスターがみられた
肺炎は100
・合併症としては、ARDS 29%、RNA血症15%、
  急性心臓症状 12%、二次感染10
ICU入室は32%、死亡は15
・血中サイトカインは IL2IL7IL10GCSF
  IP10MCP1MIP1ATNFα が比較的高値

 上記 The Lancet の論文では、41症例の解析において、1/3は ARDS という重症の肺の状態を発症、6症例が死亡、5症例は急性の心臓症状がでており、4症例は人工呼吸器が必要であったと報告されています。

 もう一方の論文では、潜伏期間は1週間程度、重症化までは2週間程度と見積もられています(下図)。


 これらに先んじて、中国の武漢の医療機関からは肺炎の臨床画像やまとめについての資料がネット上に公表されています

 29日にはさらに、The Lancet に 2報の論文が、NEJM にも1報の論文がでました。


・男性68%、女性32
・年齢中央値が55.5 (Range 21-82
基礎疾患がある人が51 (心血管疾患 40%、
  消化器病 11%、内分泌疾患13%、悪性腫瘍1%等
・華南海鮮市場へ曝露した人 49
・一家族のクラスターがみられた
・症状としては発熱 83%、咳 82%、息切れ 31%、筋肉痛 11%など
・合併症としては、ARDS 17%、急性腎障害3% など
ICU入室は23%、死亡は11%、退院 31%、入院継続が 58%


 2月7日には JAMA に武漢で入院して治療を受けた138例の症例についての論文も公開されています。
 ▶ Clinical Characteristics of 138 Hospitalized Patients With 2019 Novel Coronavirus–Infected Pneumonia in Wuhan, China


 WHO などによると、感染はどの年代にも起こりうることがわかっており、中国では生まれてすぐの新生児にも感染が確認されたとの報道がありました。日本での症例については2月6日に、国立国際量研究センター病院のグループが治療経過をまとめたものを発表しています。いずれも重症例ではなかったようです。

 2月17日には 中国CDC から44,000例を超える症例を解析した報告が出ています。
 ▶ Vital Surveillances: The Epidemiological Characteristics of an Outbreak of 2019 Novel Coronavirus Diseases (COVID-19) — China, 2020


・中国の感染症情報システムを利用した解析
・総計 72,314例、確定例 44,672例
 疑い例 16,186例、臨床診断 10,567例、無症候 889例
・男性51.4
・重症度については 軽症 80.9%、中等度 13.8%、重症 4.7%、不明 0.6%
・併存疾患としては 高血圧 12.8%、糖尿病 5.3%、心血管疾患 4.2%など
死亡数 1,023例、致死率 2.3%
・医療従事者の症例が 1,716例、5例は死亡







新型コロナウイルスの感染対策


 対応と院内感染対策については、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターより「中国湖北省武漢市で報告されている新型コロナウイルス関連肺炎に対する対応と院内感染対策」が発表されています。

 これによると、患者や疑い例については、サージカルマスクを着用、個室管理をすること、医療従事者については標準予防策・接触感染予防策・飛沫感染予防策を基本とする予防策とされています。

 その他、WHOCDCも対策をまとめており、基本的に標準予防策・接触感染予防策・空気感染予防策で対応することとしています。
 しかしこれらはあくまでも医療機関などでの対応時のものです。

 一般の方には、十分な手洗い、人込みを避けること、症状のある人に接触しないこと、症状があるなら外出を控えること、などの一般的な感染対策が重要です。

 インフルエンザのシーズンでもあり、接触情報なども大事になりますが、まずは情報に注意するとともに、パニックは起こさず健康管理を行うことが重要と考えられます。



公的情報源


 公的な情報(少なくともソースが明確である情報)を優先して閲覧し、複数を確認・検討して評価するようにすることが大事と思います。

  内閣官房
  (国立感染症研究所)
  国内のサーベイランス、医療体制整備 (国立感染症研究所)

 ▶ 日本医師会の特設ページ
 ▶ 新型コロナウイルス感染症
   日本感染症学会 リンク集もよく全般的情報あり
 ▶ 新型コロナウイルス感染症に関するQ&A
   日本小児科学会 お子さんへの感染等心配な方によい
 ▶ 妊娠中ならびに妊娠を希望される⽅へ
   日本産科産婦人科感染症学会
           妊娠中・授乳中の方などによい


 ▶ 各国の公的な新型コロナウイルス情報のページ
  ・Australia
  ・Canada
  ・China
  ・France
  ・Singapore
  ・Spain
  ・UK
  ・US



参考になるサイト・記事


 ▶ 新型コロナウイルス どれぐらい警戒したらいいの?
  感染症のスペシャリストに聞きました BuzzFeed Japan
  … 岡部信彦先生へのインタビュー。非常に冷静で役に立ちます
 ▶ 新型コロナ治療、最前線のトップ「国内では一人も死なせたくない」
   BuzzFeed Japan
  … 治療にあたっている大曲貴夫先生へのインタビュー。
    情報も新しく大変に良い。
 
 ▶ How Bad Will the Coronavirus Outbreak Get? 
  Here Are 6 Key Factors
  … NYT の記事。英語ですが非常によい。図もわかりやすい。

  現時点で分かっていること Yahoo!ニュース個人 忽那賢志 医師
  … 時系列でわかりやすくまとまっています
  Yahoo!ニュース個人 忽那賢志 医師
  … 本記事でも触れている The Lancet 論文を紹介しています。
  … Yahoo!ニュース個人 忽那賢志 医師
  … Yahoo!ニュース個人 忽那賢志 医師
 ▶ 徐々に見えてきた新型コロナウイルス感染症の
  重症度と潜在的な感染症数
  … Yahoo!ニュース個人 忽那賢志 医師
  メディカルトリビューン 岩田健太郎 医師
  …1月26日時点での最新情報を踏まえ論文解説されている。
  … ハフィントンポスト 1月24日
  … DIAMOND オンライン 1月27日  
 ▶ 新型コロナウイルスについて知っておきたい20のこと
  … 日経ビジネスオンライン、随時更新されている

  … nature 時系列に沿ってよくまとまっています。
    コロナウイルスについてのわかりやすい動画付き。

  … 非常によくまとまっています

 ▶ Wikipedia 日本版 …流動的なので情報が正確かは精査が必要ですが。

 日本医事新報にプロフェッショナルのオピニオンが掲載されています。

 ▶ Novel Coronavirus 2019 (2019-nCoV): What You Need to Know
   … IDSA アメリカ感染症学会の特設ページ



関連する論文



The Lancet には臨床的な特徴についての論文も出ています

 ▶ The Lancet 誌の特設ページから複数の論文にもとべます。1月24日付のLancetに論文は二報。一報は41症例の報告、もう一報は家族内での感染の解析の報告。
 またNEJM、エルゼビア、Cell press も特設ページを開設しています。

  Int J Infect Dis, 91, 264-266 2020 Jan 14.
  J Med Virol  2020 Jan 16.
  J Med Virol 2020 Jan 15
  J Med Virol  2020 Jan 22
  bioRχive 2020 Jan 23
  JAMA Network Viewpoint January 23, 2020
  The Lancet
  J. Clin. Med. 2020, 9(2), 330
  NEJM January 24, 2020
  NEJM January 24, 2020
  NEJM January 24, 2020
  Eurosurveillance  January 22 2020



参考になる書籍等



 ▶ Fields Virology (Knipe, Fields Virology)
  … ウイルス学の定番書。825-858ページがコロナウイルスについて。
  … ウイルスとはなにかを知る入門書として
  … 読みやすくわかりやすいウイルス学の読み物入門書。
  … 本ブログ著者の note、ウイルスについてのごく基本的な話。



新型肺炎関連の報道など


  ロイター 1月20日
   NHK NEWS WEB
  ウォールストリートジャーナル 1月21日
  読売新聞 社説 1月22日
  日本経済新聞 1月22日
  TBSニュース 1月22日
  朝日新聞 1月22日
  朝日新聞 1月22日
  朝日新聞 1月22日
  産経デジタル 1月22日
  産経デジタル 1月22日
  時事ドットコム 1月23日
  時事ドットコム 1月23日
  時事ドットコム 1月23日
  NHK NEWS WEB 1月23日
  毎日新聞 1月23日
  ナショナルジオグラフィック 1月23日
  ブルームバーグ 1月23日
  ウォールストリート・ジャーナル 1月23日
  CNN 1月23日
  BBC NEWS Japan 1月23日
  ロイター 1月23日
  NHK NEWS WEB 1月24日
  日テレ NEWS24 1月24日
   AFP 1月24日
   NHK NEWS WEB 1月25日
   ロイター 1月25日
   時事通信 1月26日
   ブルームバーグ 1月26日
   サイエンスポータル 1月27日
   ビジネスインサイダー 1月27日
   ハフィントンポスト 1月28日




デマにご注意を


 SNS などを中心にデマも非常にたくさん飛び交っています。
 SNS 各社も対策に乗り出したという報道もあります。
  ワシントンポスト 1月27日
 
 厚労省もデマに注意とツイッター上で呼びかけたほか、WHO にもデマや作り話、一般的な質問への対策ページができています。
 ▶ Myth busters

 典型的なデマはいくつかあります。
  ● 新型コロナウイルスは生物兵器/人工的に作られたウイルス
  ● 新型コロナウイルスは急激に変異する/人がその場で倒れて死ぬ
  ● 中国政府の発表する数字は実際の 1/10 である
  ● WHO と中国は結託して状況を隠している
  ● 新型コロナウイルスは飛沫で感染するHIVである
  ● アルコールでは消毒できない
  ● 新型コロナウイルスは二回感染し、二回目にすぐ死ぬ
  ● 新型コロナウイルスの突起はインフルエンザのHA・NAと同じ
 などなど、これらはすべてデマです。

 ▶ ファクトチェック・イニシアティブ 新型コロナウイルス特設サイト
  時事通信 1月29日
 ▶ その情報、信じますか? 広がる新型肺炎

 BuzzFeed にも一連のファクトチェック記事がでています。
  “悪乗り”するために押し寄せる」は不正確。まとめサイトが拡散
 ▶ 「新型コロナウイルスは人類史上最凶、致死率15%」は誤り。
  ネットで拡散、実際は…
 ▶ 「武漢から帰国した議員が検査拒否→コロナウイルスに感染」
  は誤り。「殺しに行こう」の書き込みも
 ▶ 新型コロナウイルスは「飛沫感染するエイズウイルス」は誤り。
  専門家「多くの生物から同じような配列は見つかる」
 ▶ 新型コロナ「エアロゾル感染を確認。要するに空気感染」は誤り。
  ネットで不安と誤解が拡散
 ▶ 「歌舞伎町の病院で…」「成田のイオンで…」
  相次ぐコロナ感染のうわさは事実無根


 また、感染対策の方法に関する不正確な情報も出回っています
  ● 空間除菌グッズやアロマオイルがきく 
    → 効きません
   (大手企業の売り出しているクレ●リンなどが
    売り切れているそうですが効果の実証なしです)
  ● 紅茶や緑茶を飲む/紅茶・緑茶うがいが効く 
    → 証拠は一切ありません
  ● ある漢方薬がウイルスに効く 
    → そういう実証データはありません
  ● 血液クレンジングが効く
    → 効きません
  ● 空気清浄機で完全に防げる
    → 防げません
  ● 体温をあげれば「免疫力」があがり防げる
    → 「免疫力」も意味不明ですが、
      そういう単純なことはありません。

 以前にもこういった事項について記事を書いていますが、標準的な接触・飛沫感染対策が重要であり、こういった嘘に騙されないようにしてください。



 情報の精査は重要です。まずは複数の公的情報をソースとして用い、根拠や発信元・発信者の詳細が不明な情報を信じないようにしましょう。SNS にも嘘が大量に流れています。真偽の確認は困難です。またセンセーショナルな動画などに飛びつかないようにしましょう。




まとめ


 中国武漢から広がっている新型コロナウイルス 2019-nCoV による肺炎を主症状とする感染症は、すでに中国国外にも広がっています

 感染力は麻疹などよりは低いものの、ヒトーヒト感染があり、重症例中心ではあるが報告をまとめると死亡率は0.3-1%程度と見積もられています。基礎疾患(糖尿病や高血圧)があるとリスクが高いようですが、詳細は不明です。
 ウイルス学的特徴は次々に判明していますが、ワクチン・特効薬はありません
 
 中国をはじめ各国で対応が進んできてはいます。WHOも情報を頻繁に出しています

 繰り返しになりますが、こういった新たな病原体による感染症の流行に対しては、正しい情報を入手し、決してパニックにならず、国であっても個人であっても、できることを粛々と行うことが重要です。煽られたり焦ったり、過剰に不安に思ったりせず、デマ・流言飛語に騙されないようにし、情報に注意しつつ、できる感染対策をして、日常を過ごすことが肝要ですね。







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