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2020年1月10日金曜日

【書籍紹介】病理診断を極める 60のクルー

 病理医向けの書籍、病理診断を極める 60のクルーを紹介します。
 専門医受験前の方や、専門医でもちょっとした事項をまとめて読んでおきたい方にはおすすめできる一冊です。




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2019年4月30日火曜日

【書籍紹介】Quick Reference Handbook for Surgical Pathologists 【病理医必携】

 病理医は絶対に手元においておいて損はないよという有名な本を一冊紹介いたします。ご存知の方が多いとは思いますが…。



 【商品名】Quick Reference Handbook for Surgical Pathologists
     → 新版ももうすぐ出る模様

 この本は、病理医向けのレファレンスマニュアルで、この世界のゲームチェンジャーと言われたほど画期的で便利なものです。

 もともとは、アメリカの病理レジデントたちのお役立ちレファレンスとしてはじまったとのこの書籍ですが、あまりに便利であり、大ヒットになったという一冊です。

 

内容紹介より引用


This book is a compilation of high-yield, at-a-glance summaries for various topics on which pathologists frequently need information in a quick reference format while at the microscope (or when cramming for the boards). 


 まさにその通りで、ちょっとした項目、たとえば CK7とCK20 での原発巣の判別の考え方、様々な診断基準のカウントの基準、紡錘形細胞腫瘍診断時の免染パネル、リンパ腫の免染パネル…などなど、さっと手元にあると確認に便利な事項がよくよくクイックリファレンスの形式でまとまっています。


The authors are early-career pathologists who have compiled this book from the perspective of pathologists-in-training. The focus is not organ-based histologic criteria, but rather everything else that goes into pathologic diagnoses but is difficult to keep committed to memory. 


そう、著者がレジデントであることからも非常に現場オリエンテッドかつ、プラクティスに有用な情報が盛り込まれており、使いやすいメモ、レファレンスなんですね。


The emphasis is on immunohistochemistry, special stains, grading systems, molecular markers, tumor syndromes, and helpful clinical references. The book has a unique format in that the information is presented primarily in tables and diagrams accompanied by minimal explanatory text. 


テーブルとダイアグラムは非常にわかりやすく端的にまとまっていますが、それ以上に内容も盛りだくさんで必ず役に立つといってよいと思います。非常に有用な情報源にもなりますね。リファレンスもしっかりついているので安心です。


It is intended to serve as a ‘peripheral brain’ for pathology residents and also practicing pathologists, where frequently needed information is readily accessible and easy to navigate. 


 ペリフェラル・ブレイン として、座右のレファレンスとして活用できると思います。


この本の対象となるひとは



 端的に言ってしまえば、すべての病理医にお勧めしたいです。
 持っていない病理医は買ってほしいと思いますし、もし知らない病理医がいたら教えてあげてほしい。こういうツールがあるだけで病理診断技術は向上すると思いますし、ある意味で標準化もされると思いますし、時間や労力を節約できることは間違いなく、病理医の能力の向上にもつながると考えるからです。

 日常診療はもちろん、病理専門医試験にでるような知識も身に付きます。読み通すような本ではありませんが、ちらちら読んでいると確実に身につく。

 これはいい本。これの日本語版を作りたいと思います。
 なかよし病理医のどどたんと企画を考えていますが、どこか出版社協力してくれないかなー…!

 おすすめ本!★★★★★








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2019年4月12日金曜日

こういうシンプルな病理読解サイトを作りたい - Gastrointestinal Tract Reading

 病理の組織の読み方、ってなかなか初学者や外の方には難しくて、どこを見ているんだかとか、どこがどういう構造なのかとかを説明するのも困難なことが多いんですね。

 ディスカッション顕微鏡で一緒に眺めながら見ていくっていうのはとてもいいんですが、やはり自学自習でもわかりやすい情報があるといいように思うのです。




 Yale 大学の Gastrointestinal Tract Reading のサイト を見てみました。

 このサイトでは、大きな組織写真を提示し、わかりやすい解説と、図中への矢印の挿入による図解がされており、とてもわかりやすいです。
 これを書籍でやると非常に枚数が必要であることと、行ったり来たりが面倒ですが、サイトでやれば確かにわかりやすい。

 個売ったサイトを作りたいなぁ…病理読解のサイトとして、まずは組織学、そして病理組織学という形で、全身かつ様々な疾患について、ここをこういう風に読んでいるんだよということを示すような形でしたいなぁと思うのです。

 だれか一緒に協力してやってくれる病理医やその他の仲間いないかなぁ…。
 ちょっとこのブログで試しに何回か記事を書いてみて、うまくいきそうならサイトを作ってみようかなぁと考えています。


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2019年2月20日水曜日

【論文紹介】SOX-11陰性 マントル細胞リンパ腫75例の臨床病理学的検討 / AJSP

 マントル細胞リンパ腫に関する新しい論文が AJSP に出ていたので紹介いたします。

 マントル細胞リンパ腫 (MCL)は、B細胞性リンパ腫で、indolent と aggressive の中間程度の悪性を示すことが知られており、形態学的には小~中程度の大きさの均質な細胞の単調または軽度に結節を形成するような増殖をしめし、免疫組織化学的には CD5(+)、CyclinD1(+)が典型的であるが、近年みつかった SOX-11(+)のことが多いのも特徴です。
 臨床的には比較的白血化を引き起こしやすいことも知られています。

 最近までの研究においては MCL のうち、SOX-11 を発現していることが予後度影響するかどうか、はっきりせず論点となっていました。
 今回のこの論文では75冷のSOX-11陰性 MCL との比較によりその臨床病理学的特徴を解析しています。

 それでは論文詳細です。 



● SOX11-negative Mantle Cell Lymphoma Clinicopathologic and Prognostic Features of 75 Patients
 The American Journal of Surgical Pathology: February 12, 2019
 Publish Ahead of Print
 Xu J, Wang L, Li J, Saksena A, Wang SA, Shen J, Hu Z, Lin P, Tang G, Yin CC, Wang M, Medeiros LJ, Li S.

【概要】
 SOX-11陰性MCL75例を検討した。
 SOX-11陽性MCLと比較し、
  より白血化が多かった(21% vs. 4%, P=0.0001)
  より典型的な形態を呈した(83% vs. 65%, P=0.005)
  よりCD23陽性の割合が高かった(39% vs. 22%, P=0.02)
  よりCD200陽性の割合が高かった(60% vs. 9%, P=0.0001)
  よりKi67陽性率が低かった(23% vs. 33%, P=0.04)
  Overall Survival に有意な差はなかった(P=0.63)
  一方、高いKi67陽性率と blastoid/pleomorphic
   morphology は SOX-11陰性陽性にかかわらず
  より短い Overall Survival と関連していた。
  MCL の予後予測スコア(MIPI)でが高い場合、
   SOX-11陰性の場合には有意に予後が悪く(P<0.05)、
   陽性の場合には有意ではなかった(P=0.09)。
  リンパ節病変ありまたは stage III/IV の場合には、
   SOX-11陰性の場合には予後は有意に悪くはないが、
   SOX-11陽性の場合には予後不良であった。
  まとめると、SOX-11陰性MCL はより白血化の頻度が高く
   典型的な形態CD23・CD200の発現率が高く
   Ki67陽性率が低い
   SOX-11陰性MCL の予後因子は、形態、Ki67陽性率、
   MIPIである
【症例の選択】
  テキサス大学アンダーソンがんセンターの
  2004/1/1-2016/12/31 の MCL症例。
  2016年 WHO classification に基づく分類。
  IHCでCyclinD1(+)またはt(11;14)(q13;q32)
   またはCCND1-IGH で診断を確定。
【結果の概要】
  SOX-11陰性 MCL 75例、SOX-11陽性 MCL 146例。

    
【病理学的解析】
 形態と免疫染色については Table 2 としてまとまっています。

【臨床的アウトカム】
  略:(概要に示したものが代表)
【結論】
 SOX-11陰性 MCL 75例、SOX-11陽性 MCL 146例の検討で、
 SOX-11陰性 MCL はより白血化の頻度が高く、
 典型的形態で、CD23・CD200発現率が高くKi67陽性率が低い。
 SOX-11陰性 MCL の予後因子は、形態、Ki67陽性率、
 MIPIであることがわかった。
  


 MCL は indolent lymphoma と aggressive lymphoma の中間的な場合もおおい B細胞性リンパ腫であり、診断は比較的容易であることもあるものの、時に困難で SOX-11 は有用なマーカーとして報告されました。

 リンパ腫の診断チャートは参考に ▶ 峰式 リンパ腫の病理診断フローチャート

 しかし、SOX-11 陰性 MCL もあるということがまず話題となり、SOX-11 の発現の有無でのふるまいについては議論が分かれているところでした。
 今回紹介した論文では、SOX-11 陰性 MCL では白血化の頻度が高いことや、MIPI を用いて不良予後の予測ができそうであることなどが分かりました。
 
 MCL についてはさらに詳細な生物学的な検討がなされそうに思います。

● 関連記事
 ▶ 【血液病理】DLBCL の Hans の基準
 ▶ 峰式 リンパ腫の病理診断フローチャート
 ▶ 【書籍紹介】レベルアップのためのリンパ腫セミナー
 ▶ 【書籍紹介】若手医師のためのリンパ腫セミナー
 ▶ 【書籍紹介】見逃してはならない血液疾患 病理からみた44症例




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2018年11月18日日曜日

フューチャリング、アニサキス

 医師ブログランキングを見ていると、最近「くづ医者の救急」さんが猛烈な人気です。もうね、PV とか異常な数なんですね、すごい。

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 昨日の記事が「アニサキス、入れといたから」でした。あぁ、アニサキス、思い出すなぁということで、ちょっとアニサキスについて書きます。

 まず自験例の病理の写真を。結構きれいなんですよ。とるときは動いていて気持ち悪いですが、固定してきれいな標本にできるんです。

Fig.1 アニサキス なかなか綺麗

Fig.2 まさに胃壁にかみつくアニサキス。左下が頭、上は胃粘膜



アニサキス症


 アニサキスは寄生虫の一種で、魚介類に寄生し人にアニサキス症を引き起こします。
 魚介類の生食が原因となるわけで、フレッシュであればあるほど生きたアニサキスが混じている可能性が高くなります。

 日本においては、魚介類の生食で最も多発するのはアニサキス症なのですが、虫種が確定したのは1960年代とのこと。
 当時はなんと、腹痛に対して開腹手術をして、初めてアニサキス症であると証明されうるというような状況でした。ひゃー。

 その後は内視鏡が普及して摘出されるようになり、症例数もかなりあることが分かってきました。

Fig.3 アニサキス… Wiki より

疫学としては


 アニサキス症は日本ではおよそ7000件ほどと推計されているようです(2005年から2011年の年平均)が、海外での報告数はヨーロッパで約500件、アメリカで約70件。圧倒的に寿司・刺身好きの日本人に多そうですね。

 アニサキスをもっている魚介類は約160種であり、サバが最も重要な感染源と考えられています。まぁ有名ですね。実は魚介類はアニサキスの幼虫が寄生する中間宿主・待機宿主というもので、本来の居場所ともいうべき終宿主はクジラやアザラシなどの海生哺乳類でなのだそうです。

Fig.4 アニサキスの生活環、Wikiより



アニサキス


 アニサキスは何種類もいるようですが、いずれもその第3期幼虫という段階のものが魚介類に寄生していて、アニサキス症の病原体となります。
 

症状


 胃アニサキス症では、食後数時間で激しい上腹部痛や悪心・嘔吐を起こすことが多いようです。病歴から疑い、内視鏡検査で確定することが多いですね。
 しかしながら、胃粘膜に入りこもうとする虫体が見つかっても、無症候例のこともあるようです。

 実は、アニサキス症の激烈な症状は、過去にアニサキスに一度暴露されている個体に生じるアレルギー症状なのではないかということも言われてはいます。

 胃アニサキス症以外にも、腸アニサキス症(イレウスになった症例報告 ▶消化管外アニサキス症による癒着性イレウスを来した 1 例)、肝臓アニサキス症(症例報告 ▶ 肝アニサキス症の 1 例)などの消化管外アニサキス症、アニサキスアレルギーなどがあります。いずれにしてもアレルギー反応と考えられる症状がでますね。


予防するために



 海産魚介類の生食には注意し、できるだけ加熱して食べることが重要ですね。
 冷凍で感染性を失うので冷凍後は基本的には安全と考えられますが、たまに生きていることがあるようです。


治療は取り出すこととアレルギー対策


 治療は胃アニサキス症では内視鏡検査で虫体を鉗子で摘出すればよいのですが、腸アニサキス症ではひどければ手術になることもありますね。

 病理組織としては、アニサキスの虫体は上にしめしたようなもので、頭が食い込んでいるところには炎症が起こります。そこが肉芽腫になることもありますね。虫体の組織学的特徴については、一番下にリンクをおいた感染症アトラスに詳しいですね。

 駆虫薬はありません…。しかしながら、正露丸に含まれる木クレオソートにはアニサキスの運動抑制作用があって症状の改善が期待でき、特許がとられています。


 生食する際には十分に注意しましょう…。


● ほむほむ先生のブログの記事もお勧めです!
 ▶ イタリアにおけるアニサキスアレルギーの発症率は?


● 情報のあるサイト

 ▶ 国立感染症研究所 アニサキス症とは
 ▶ 厚生労働省 アニサキスによる食中毒を予防しましょう
 ▶ Wiki英語Wiki
 ▶ 感染症病理アトラス復刻版オンラインより アニサキス症








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