昨日の記事が「アニサキス、入れといたから」でした。あぁ、アニサキス、思い出すなぁということで、ちょっとアニサキスについて書きます。
まず自験例の病理の写真を。結構きれいなんですよ。とるときは動いていて気持ち悪いですが、固定してきれいな標本にできるんです。
Fig.1 アニサキス なかなか綺麗 |
Fig.2 まさに胃壁にかみつくアニサキス。左下が頭、上は胃粘膜 |
アニサキス症
アニサキスは寄生虫の一種で、魚介類に寄生し人にアニサキス症を引き起こします。
魚介類の生食が原因となるわけで、フレッシュであればあるほど生きたアニサキスが混じている可能性が高くなります。
日本においては、魚介類の生食で最も多発するのはアニサキス症なのですが、虫種が確定したのは1960年代とのこと。
当時はなんと、腹痛に対して開腹手術をして、初めてアニサキス症であると証明されうるというような状況でした。ひゃー。
その後は内視鏡が普及して摘出されるようになり、症例数もかなりあることが分かってきました。
Fig.3 アニサキス… Wiki より |
疫学としては
アニサキス症は日本ではおよそ7000件ほどと推計されているようです(2005年から2011年の年平均)が、海外での報告数はヨーロッパで約500件、アメリカで約70件。圧倒的に寿司・刺身好きの日本人に多そうですね。
アニサキスをもっている魚介類は約160種であり、サバが最も重要な感染源と考えられています。まぁ有名ですね。実は魚介類はアニサキスの幼虫が寄生する中間宿主・待機宿主というもので、本来の居場所ともいうべき終宿主はクジラやアザラシなどの海生哺乳類でなのだそうです。
Fig.4 アニサキスの生活環、Wikiより |
アニサキス
アニサキスは何種類もいるようですが、いずれもその第3期幼虫という段階のものが魚介類に寄生していて、アニサキス症の病原体となります。
症状
胃アニサキス症では、食後数時間で激しい上腹部痛や悪心・嘔吐を起こすことが多いようです。病歴から疑い、内視鏡検査で確定することが多いですね。
しかしながら、胃粘膜に入りこもうとする虫体が見つかっても、無症候例のこともあるようです。
実は、アニサキス症の激烈な症状は、過去にアニサキスに一度暴露されている個体に生じるアレルギー症状なのではないかということも言われてはいます。
胃アニサキス症以外にも、腸アニサキス症(イレウスになった症例報告 ▶消化管外アニサキス症による癒着性イレウスを来した 1 例)、肝臓アニサキス症(症例報告 ▶ 肝アニサキス症の 1 例)などの消化管外アニサキス症、アニサキスアレルギーなどがあります。いずれにしてもアレルギー反応と考えられる症状がでますね。
予防するために
海産魚介類の生食には注意し、できるだけ加熱して食べることが重要ですね。
冷凍で感染性を失うので冷凍後は基本的には安全と考えられますが、たまに生きていることがあるようです。
治療は取り出すこととアレルギー対策
治療は胃アニサキス症では内視鏡検査で虫体を鉗子で摘出すればよいのですが、腸アニサキス症ではひどければ手術になることもありますね。
病理組織としては、アニサキスの虫体は上にしめしたようなもので、頭が食い込んでいるところには炎症が起こります。そこが肉芽腫になることもありますね。虫体の組織学的特徴については、一番下にリンクをおいた感染症アトラスに詳しいですね。
駆虫薬はありません…。しかしながら、正露丸に含まれる木クレオソートにはアニサキスの運動抑制作用があって症状の改善が期待でき、特許がとられています。
生食する際には十分に注意しましょう…。
● ほむほむ先生のブログの記事もお勧めです!
▶ イタリアにおけるアニサキスアレルギーの発症率は?
● 情報のあるサイト
▶ 国立感染症研究所 アニサキス症とは
▶ 厚生労働省 アニサキスによる食中毒を予防しましょう
▶ Wiki、英語Wiki
▶ 感染症病理アトラス復刻版オンラインより アニサキス症
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