リンパ腫の病理診断フローチャート
病理診断医としては血液病理をとくにみています。
血液病理というのは主に「血液のがん」を診断するのですが、血液のがんは大きくわけて「白血病」と「リンパ腫」ということになります。
白血病は血流のなかにがん細胞が流れている、リンパ腫は固まりになっているとざっくり分けてよいと思います。実際には造血器腫瘍といって、骨髄を中心とする腫瘍群もありますが、今回はざっくりと。
さて、そのうちリンパ腫の診断は病理組織で行われることが多く、血液病理というと、主にリンパ腫の診断ということになります。
今回は簡単に、私が普段考えているリンパ腫の診断をフローチャートにしているものをアップします。大体こんな感じ。
今後もこの記事に適宜、追記・アップデートしていこうと思います。
フローチャート
Fig.1 2018年10月18日現在、Ver.3.2 であります。 |
Fig.2 チャート中で使う略語になります |
● B細胞性リンパ腫
リンパ腫ではやはりB細胞リンパ腫が多いですので、基本になります。
構築、大型細胞の有無と、その免疫組織化学的形質をみるのが基本です。
Fig.3 基本的なB細胞性リンパ腫の診断チャート |
● T/NK細胞性リンパ腫
T/NK細胞性リンパ腫は圧倒的に東洋人 (モンゴロイド)に多く、日本や韓国、中国や台湾でみられます。日本においては常に鑑別に挙げるべきはATLです。
T細胞性腫瘍が考えられた場合には、臨床情報 (出身地もそうですが、移住もあるので詳細に)、HTLV-1抗体の有無の確認は重要です。
また、EBVは重要な要素ですので必ずチェックをした方がよいと考えます。
AITLについては、腫瘍細胞の同定が難しいこともありますので、臨床情報と合わせて考えることも必要です。いまはよい抗体がありますので免染も積極的に行うのがよいと思います。いずれにせよ、高齢者が多いので要注意。
Fig.4 基本的なT/NKリンパ腫の診断チャート |
● 免疫不全関連リンパ腫
免疫不全状態になると、特殊なリンパ腫が発症しやすくなります。
免疫不全状態には、先天性免疫不全症、AIDS、臓器移植・血液幹細胞移植後などがあります。また、膠原病などに対するステロイド・免疫抑制剤使用、生物学的製剤使用などの医原性のものも最近は増えていますので注意が必要です。
さらに、時には90代以上の超高齢者における発症もあります。これは加齢による免疫不全と考えられますが、注意が必要です。
このチャートに入ってくるような場合には、なによりも臨床情報が重要です。
移植後は PTLD が最も多く、メトトレキサート(MTX) 使用では MTX関連リン増殖性疾患が多くなります。これは今回はチャートから外してありますが、EBV陽性であることを確認することが重要です。
Fig.5 基本的な免疫不全リンパ腫の診断チャート |
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