今回は、病理専門医試験のための勉強法について著者の考えと、勉強におすすめの書籍のまとめを書きたいと思います。
ちなみに…著者は成績は、まぁまぁ (上の下ぐらい)で通りました。
仲良くしていただいているお友達達がみなさん毎年トップ (なんと4年連続の4人)で通っていますが、彼らにも少し話を聞いています。以下の考察は私見ですが、まぁ大筋間違いないと思います。
病理専門医試験にどう対処するのか考える
病理専門医試験は、他の記事にも書きましたが、診断でいうところの診断名を書かせることが主たる試験です (解剖は診断レポート形式ですが)。つまり、知識があり診断ができる、という基本実務能力を見られることになります。
病理専門医になるまでには専門医研修としての実務をしているはずですが、その期間は今では最低3年間です。普段からしっかりと診断業務をしていれば試験は大したことない、というような言い方をする方 (主に上の先生ですね、たまに先輩とかでしょうか) が多いですが、これはあまりに極論であると、私は思います。
というのは、病理診断の道に入っていればわかるように、施設による症例の差や指導の在り方、スタンスなどはあまりにばらばらで、理想的に基本的な領域や基本技能のすべてがまんべんなく学べるということはあまりない、と考えるからです。
もう一つ理由を挙げるとすると、診断業務をどのぐらいの深さで、どのぐらい力をいれて、どのぐらいの程度の教育を受けてすごしているか、というのも、施設や医局の文化、個人による差が非常に大きいと考えられます。
とすると、診断業務をやっていれば自然に専門医試験を乗り切れる、というのは言い過ぎ、というのが私の立場になります。
では、どのように専門医試験の対策をするか。
簡単です。勉強するんです。専門医試験むけに。当たり前か。
しかしもちろん前提があります。それは、ひるがえって、やはり診断業務をしっかりやっていることが前提になる、と言いたいのです。
丁寧にかつ十分な量、普段の診断業務を行っている必要があります (私とトップ合格者の一番大きな差は、たぶん、ここ。私は大学院が外部の研究所だったため3年半ブランクがあり、結構苦労しました)。
日頃の診断であるオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)で身につけたことと、いわゆる机上でおこなうお勉強の合わせ技で、総合力でもって試験に備える必要がある、というのが私の考え方です。
今回は、OJT の話ではなく机上のお勉強について書きたいと思います。
OJT の効果的なやり方などは、また別の記事で書いていきます。
病理専門医試験のための勉強法
ではこの机上のお勉強の方針としてはどういう方針で臨むのか。
ベースになる事実はたった一つです。
病理専門医試験には出やすい問題があるなど傾向が明らかであるということ。
よって、その対策をすればいいのです。
具体的には、
① 過去問を研究する
② 過去問研究をもとに標本を集める/あつめられた標本へアクセスする
③ あつめた標本で検鏡すると同時に、書籍を読んで勉強する
④ 型別に対策を行う
① まずはともあれ過去問研究
過去問研究についてですが、過去問は病理学会のホームページから手に入ります。しかし、自分ですべて集めたうえで解析するのは難しいし時間がかかりますね。
そこで、裏技を教えてしまいます。
一つは、もちろん、このホームぺージを読んでもらうことなんですが、とっておきのブログを紹介します。
・どどたん JK のWAKWAK 病理診断
私のお友達病理医にして、実はこの方は断トツトップ合格です (内緒だった??笑)。
よく分析された記事、統計、すべてがあります。病理専門医受験前には必ず一読してください。
出題傾向が重要です。過去問研究記事は今後も追加します。
② 標本を手に入れる
大学の医局に所属していれば、きっと標本コレクションがあると思います。専門医対策用とか、初期研修用とか、専門医研修用とかのセットを誰かしらが作っている、管理しているのではないかと思います。
聞いてみましょう。
大きな病院にもあることがあります。
周囲にそれがない場合どうするか。大きい施設にぜひ聞いてみてほしいですね。関連大学でもよいですし、地域のがんセンターなどはどうでしょうか。
あとは、意外なところで、試験委員をやった先生はもっていることがありますので、過去に試験委員をされていた先生に尋ねてみるのも手です。
それらがすべてだめなら、作りましょう。自分で作るのです。診断データベースから自分では見たことのないものを引っ張り出してきて、チェックします。
真新しい病院でなければ標本はあるのではないでしょうか。
③ あつめた標本で検鏡すると同時に、書籍を読んで勉強する
標本を手に入れたら、見ていきます。一度見る、これが大事なんです。
アトラスで写真を眺めてもあまり身につかないんですね。全くつかないというわけではないけれど。
順序だてて身につくものをしめすと、
自験例の症例 > 他の人が見てディスカッションした症例 > 引っ張り出した標本 > アトラスなど教科書で読んだ疾患
だと思っています。自験例というのが一番強い。
だからこそ、普段の業務でしっかり当番などに充ててもらうことも重要なのだと思うのです。私はブランク期間中はとにかくこれがなかったのがきつかったですね。
④ 型別に対策を行う
型別に対策を行う必要がありますが、これについては、大きくは病理解剖の問題と一般診断の問題にわけて考えるとよいと思います。文章問題は別としましょう。
型別に勉強するのですが、原則は③なのです。つまり、見る。そして見たものをしっかり調べて読む。そしてまた、見る。この繰り返しが重要ですね。
今回は緒論ということで詳細には入りませんが、これが鉄則だと思います。
次からは過去問研究と各論的な勉強の仕方について書いていきたいと思います。
ですが、今回は残りの部分で病理専門医試験向けの書籍を少し紹介します。
病理専門医試験勉強向けの書籍の紹介
病理専門医試験の勉強につかえると考える書籍をここからは紹介したいと思います。
(関連記事としては受験体験記を書いており、そこにも書籍紹介を入れてあります。
▶ 平成28年度 病理専門医試験 を受験してのまとめ
今回の紹介では病理解剖や法規については触れていません。それらは今後またまとめていきたいと思います。
● I・II 型問題のために使える書籍 (法律・規制事項などを除きます)
・ 病理診断クイックリファレンス
実用度: ★★★★★
分 量: ★★★★★
普及度: ★★★★★
総合おすすめ度: ★★★★★
事実上の過去問集、過去問解説集であることは論を待たない一冊です。
病理専門医試験受験者必携。必ず手に入れましょう。
すべて、過去問に出ている項目建てになっています。過去問の問題は基本的に、今後も試験に出やすい疾患であることも間違いない。
病理と臨床の増刊号なので文光堂からも入手可能です。
・カラーアトラス 病理組織の見方と鑑別診断 第6版
実用度: ★★★★★
分 量: ★★★★☆
普及度: ★★★★★
総合おすすめ度: ★★★★★
リンク Amazon 楽天ブックス 7net honto e-hon
紀伊國屋書店 図書館
次にあげる「組織病理アトラス」派とわかれますが、私は、両方ともすべての図を眺めるつもりで読んでおくことをお勧めします。
とにかくしっかりと見られるカラーのアトラスが、体系的に、かつ、必要量のっている日本語のアトラスはこれと、次のアトラスしかない、と言っていいのです。
版も改訂されており、基本的に病理専門医試験に出題されるものと疾患概念や知識のずれはあまりないものと考えられるのもよいところ。
何度も読むこと、図を眺めること、これが重要です。
実用度: ★★★★★
分 量: ★★★★☆
普及度: ★★★★★
総合おすすめ度: ★★★★★
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紀伊國屋書店 図書館
埼玉医大が主催していた「彩の国さいたま病理セミナー」からの本。
病理専門医試験を受験するレベルの人にはちょうど良いぐらいの症例からなっていると思います。写真の質はよくないものも結構含まれている。
説明もよいのですが、ちょっと概念が古かったり、記載が統一されていないなどというところが気になる。
病理専門医試験に出題される疾患について知るならよいと思われます。
実用度: ★★★★☆
分 量: ★★★★★
普及度: ★★★★★
総合おすすめ度:★★★★☆
癌取扱い規約は一通り主要臓器については目を通しておくことが望ましいですね。もちろん実務で毎日のように使っているはずですが、一度読み通してみると意外な気づきがあるとは思います。
アトラスの部分も典型例が多いので確認しておくのによいと思います。
実用度: ★★☆☆☆
分 量: ★☆☆☆☆
普及度: ★★★★★
総合おすすめ度:★★☆☆☆
紀伊國屋書店 図書館
次にあげる「組織病理アトラス」派とわかれますが、私は、両方ともすべての図を眺めるつもりで読んでおくことをお勧めします。
とにかくしっかりと見られるカラーのアトラスが、体系的に、かつ、必要量のっている日本語のアトラスはこれと、次のアトラスしかない、と言っていいのです。
版も改訂されており、基本的に病理専門医試験に出題されるものと疾患概念や知識のずれはあまりないものと考えられるのもよいところ。
何度も読むこと、図を眺めること、これが重要です。
・組織病理アトラス
実用度: ★★★★★
分 量: ★★★★☆
普及度: ★★★★★
総合おすすめ度: ★★★★★
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紀伊國屋書店 図書館
・病理医・臨床医のための 病理診断アトラス Vol.1~3
病理専門医試験を受験するレベルの人にはちょうど良いぐらいの症例からなっていると思います。写真の質はよくないものも結構含まれている。
説明もよいのですが、ちょっと概念が古かったり、記載が統一されていないなどというところが気になる。
病理専門医試験に出題される疾患について知るならよいと思われます。
・癌取扱い規約
実用度: ★★★★☆
分 量: ★★★★★
普及度: ★★★★★
総合おすすめ度:★★★★☆
癌取扱い規約は一通り主要臓器については目を通しておくことが望ましいですね。もちろん実務で毎日のように使っているはずですが、一度読み通してみると意外な気づきがあるとは思います。
アトラスの部分も典型例が多いので確認しておくのによいと思います。
・外科病理学
実用度: ★★☆☆☆
分 量: ★☆☆☆☆
普及度: ★★★★★
総合おすすめ度:★★☆☆☆
リンク Amazon 楽天ブックス 7net honto e-hon
紀伊國屋書店 図書館
改訂されないのか、されるのか、よくわかっていませんが、ちょっと古い。もちろん日本語の成書というとこれ一冊になってしまうぐらい大きいんですが、図版もモノクロですしね。
正直なところ、持っていて損があるとまではいいませんが、専門医試験対策に使うというよりは、普段の業務でしらべるため、専門医試験の勉強で苦手なところを読んでチェックするため、という使い方になるかと思います。通読は難しいでしょうし、あまり意味はないでしょう…。
個人的には結構お気に入りの一冊。臓器別ではなくて、所見から行くのもよいし、症例ベースなのもよいと思う。そして、診断のクルーのまとめが本書は後ろについているのですが、そこにかかれている知識、表、覚え方などはとてもよいと思われる。
上記ブログのどどたん先生は「ヨコのつながり」の本と評していますね。
では専門医試験に向いているかというと、まぁ、このぐらいは知っておいてよいと思うのですが、直接役に立つかは不明です。また、あえて言うと体系的ではないので、基礎ができてから読むのがいいのかなとも思います。
正直、ここまで病理専門医試験だけで必要かは微妙ですが、細胞診専門医も受ける奇特な方はベーシックとともに買って読んでおくとよいように思います。応用問題だけでなく、基礎もしっかりしていると思いました。
見開きの左側に臨床情報と細胞像の観察ポイント、右ページに写真が乗っているタイプの本で、基本的なものから希少例まで紹介されている。
細胞検査士資格認定試験の一次試験に出題された症例を網羅しているのがうりとのことで、細胞診専門医試験までカバーできる本である。
病理専門医試験だけを考えるとややオーバースペックかもしれない。
紀伊國屋書店 図書館
改訂されないのか、されるのか、よくわかっていませんが、ちょっと古い。もちろん日本語の成書というとこれ一冊になってしまうぐらい大きいんですが、図版もモノクロですしね。
正直なところ、持っていて損があるとまではいいませんが、専門医試験対策に使うというよりは、普段の業務でしらべるため、専門医試験の勉強で苦手なところを読んでチェックするため、という使い方になるかと思います。通読は難しいでしょうし、あまり意味はないでしょう…。
・病理診断を極める 60のクルー
個人的には結構お気に入りの一冊。臓器別ではなくて、所見から行くのもよいし、症例ベースなのもよいと思う。そして、診断のクルーのまとめが本書は後ろについているのですが、そこにかかれている知識、表、覚え方などはとてもよいと思われる。
上記ブログのどどたん先生は「ヨコのつながり」の本と評していますね。
では専門医試験に向いているかというと、まぁ、このぐらいは知っておいてよいと思うのですが、直接役に立つかは不明です。また、あえて言うと体系的ではないので、基礎ができてから読むのがいいのかなとも思います。
・読む・解く・学ぶ 細胞診Quiz50ベーシック
細胞診…私苦手だし大嫌いなんですよね、あんなもの病理医のやる仕事じゃないし、HPVテスティングがひろがれば子宮頸癌スクリーニングは不要になってワクチンで病気そのものもなくなるし、肺癌だってリキッドバイオプシーが発達…おっと…おげほげほげほ、すみません。しかしながら、病理専門医試験に細胞診の問題はがっつりと出題されますので対策は必要です。
ただし、細胞診については難しい問題は出てこない。しかしまたひっくり返って、普段見ていないと結構難しい…というか何を聞かれているのかさえ分からない。
よって、アトラスを読んで自分で勉強しておくことは必須です。
この本は、わかりやすくてよい。とにかくシンプルでよいので、一読しておくと全体像がラフにつかめるし、専門医受験レベルであれば物足りると思われる。
・読む・解く・学ぶ 細胞診Quiz50アドバンス
正直、ここまで病理専門医試験だけで必要かは微妙ですが、細胞診専門医も受ける
・ポケット細胞診アトラス
見開きの左側に臨床情報と細胞像の観察ポイント、右ページに写真が乗っているタイプの本で、基本的なものから希少例まで紹介されている。
細胞検査士資格認定試験の一次試験に出題された症例を網羅しているのがうりとのことで、細胞診専門医試験までカバーできる本である。
病理専門医試験だけを考えるとややオーバースペックかもしれない。
気が向きましたらクリックをお願いします!↓
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