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著者の黒川博行さんは本当に入念に綿密に取材しており、そもそも深く業界のことをご存知。なにしろ京都市立芸術大学美術学部彫刻科卒であられます。
内容紹介より引用
弱小美術出版の佐保が夢みるのは一獲千金。骨董商いにこそ鉱脈ありと画策するが…。騙し騙されの骨董世界の裏を描く異色ミステリ
あんた、欲に眼ェ眩んだら、目利きを誤りまっせ。古美術でひと儲けたくらむ男たちの騙し騙され―これぞ、骨董商いの裏のうら。
古美術にからむ騙しあいミステリ
著者の黒川博行さんは本当に入念に綿密に取材しており、そもそも深く業界のことをご存知。なにしろ京都市立芸術大学美術学部彫刻科卒であられます。
「破門」で第151回直木賞を受賞されていますが、疫病神シリーズ以外の小説もどれも素晴らしいものです。
本作は、古美術商の世界、化かしあいの光る短編集。古美術・骨董品といえば真贋問題ですが、ここにターゲットを絞って、ここまで駆け引きをうまく描けるんだ、と感心します。
贋作を素人に売ればそれはただの詐欺でつまらない。この小説の肝はプロ同士のやりとりであり、贋作をつかめば、それは間抜けであるというそういう世界での話、というところなのです。
この道の専門的な言葉もどんどん出てきますが、それもさりげなく勉強になって、古美術って面白いなと思いながら、ミステリも楽しめる。総じてテンポが良いですね。
黒川さん自身、代のギャンブル好きであって人の弱さをよくご存じ。悪を断罪するような書き口はなく、人間って、欲深いよねぇ、こんなこともあるよね、でも何が正しいのかなんて、こだわる必要ないよねなんて、そんな気分になる淡々とした描写が続きます。
いや、おもしろい。ちょっと古い作品ですが、まったく色褪せません。
おすすめ。★★★★★ (5/5)。
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