▶ 朝日新聞 レバ刺し食べた2人が食中毒、1人は重体 茨城の飲食店
牛のレバ刺し等を含む生食をした客二人が食中毒になり、そのうち一名は「ギラン・バレー症候群」を発症して重体であったとのことですね。
原因菌として「カンピロバクター」が検出されているようです。
このカンピロバクター属の細菌による胃腸炎は増加傾向にあります。
Campylobacter jejuni |
● カンピロバクターとは
菌について
カンピロバクター(Campylobacter )属というグループに属する細菌は、17菌種ほどが知られています。1978年にアメリカで飲料水から約 2,000 人が集団感染した事例があって、注目されるようになったんですね。
ヒトに病原性をもつものは胃腸炎症状を主に起こすことが多く、原因となる菌の95%以上は、Campylobacter jejuni という種類のものであり、Campylobacter coli という菌が数%です(ちなみに jejuni というのは小腸の一部の空調 jejunum から、coli は大腸という意味の colon からですね)
情報源としては
▶ 国立感染症研究所 カンピロバクター感染症とは
▶ 感染症予防接種ナビ カンピロバクターとは
▶ 厚生労働省 カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)
▶ CDC Campylobacter (Campylobacteriosis)
などがよくまとまっています。
Campylobacter jejuni は1982年に食中毒の起因菌に指定されています。
感染源について
感染源となるのは、生肉料理(トリ刺し、レバ刺し)が多く、獣肉の不完全加熱処理食品を調理後の調理器具や手指を媒介した二次汚染(生野菜や水を含む)、時にはイヌやネコなどのペットなどからということもあります。
特に、家禽類(ニワトリ、ウズラ)の腸管にカンピロバクター属の菌はいますが、少数の菌でも感染が成立することから、腸管を含まない肉でも感染の危険性があります。
鶏肉に関しては「食品製造の高度衛生管理に関する研究」平成14~16年度報告によると、市販品ではレバーで66%程度、砂肝で67%程度、鶏肉で100%から検出されたとのことなんですね。
症状と診断・治療について
カンピロバクター属による食中毒の主な症状は胃腸炎のものです。潜伏期間が2~5日とやや長いのも特徴です。少数の菌でも発症することが知られており、潜伏期間の長短は摂取した菌の数が関係している可能性もありそう、とのこと。具体的な症状としては、下痢、悪心、嘔吐、悪寒、発熱などであり、便の回数が多いことや血便が出る比率が高いことも特徴で、発熱を伴うこともまた多いのです。
診断は臨床症状のみからでは困難であり、糞便などから菌を分離することが最も確実な方法です。微好気培養という方法で、最低2日間(37〜42℃)かかってしまいます。
よって、臨床では同定までに通常3〜5日間程度が必要になることから、迅速性と正確性を期するために PCR 法などの遺伝子診断技術が必要不可欠となっている現状がありますね。
治療としては、とにかく水分を摂取して安静とする、基本は自然治癒をサポートする方法となります。
抗菌薬は基本的には使用しませんが、基礎疾患があったり、重症である場合には使用されることがあります。
重篤な症状や合併症について
カンピロバクター胃腸炎では、胃腸炎にとどまらず、合併症が起こることも知られています。
合併症としては、ギラン・バレー症候群、反応性関節炎などが知られていますが、ギラン・バレー症候群(GBS)は非常に重篤となるものです。以下に解説します。
● ギラン・バレー症候群とは
カンピロバクター 感染症の一般的な予後としては、健常人に起こった食中毒の場合には良好な経過をとることが知られています。
しかし、感染後1〜3週間で ギラ ン・バレー症候群 (GBS)という合併症を発症する事例があります。GBS には複数の亜型がありますが、基本的に、急激な四肢脱力を主徴とする、運動神経障害優位の自己免疫性末梢神経障害のことです。
この GBSという症候群の発症メカニズムとしては、カンピロバクターの菌の表面にある糖鎖構造と、ヒトの運動神経軸索に豊富に分布するガングリオシドとの分子がよく似た形をしている、すなわち相同性があるために、免疫機構がカンピロバクターによって活性化された場合に、交差して自分自身を攻撃するようになってしまうという機序が指摘されているんですね。
GBS は予後良好なタイプもあるのですが、カンピロバクター感染症につづいて発症するタイプの GBS は、軸索型 GBS (AMAN: acute motor axonal neuropathy) というものが多くて重症化しやすく、歩行困難など後遺症がのこることもあります。
重症化すると、呼吸筋麻痺が進行しての死亡例も確認されており、治療過程で人工呼吸器管理となることもありますね。
GBS については罹患率は世界的にはおよそ人口10万人当たり1〜2人ですが、日本においては年間 2,000人前後の患者発生があると推定されているようです。
● 生食の危険性について
ちょっといいビデオがありました!
カンピロバクター菌は乾燥条件では生残性が極めて低いことがわかっていますので、調理器具などは清潔にし乾燥を心掛けることも重要になります。
そして、ここがよく聞かれるポイントでもあり、実際に出されることは減ってい入ると思いますが、生肉料理(トリ刺し、レバ刺し等)を避けることが望まれます。
厚生労働省のサイトでは、 カンピロバクター食中毒の予防方法は、まずなによりも(1)食肉を十分に加熱調理(中心部を75℃以上で1分間以上加熱)することが重要としています。具体的には未加熱又は加熱不十分な鶏肉料理を避けることが最も効果的なのだと。
また、二次汚染の防止のために(2)食肉は他の食品と調理器具や容器を分けて処理や保存を行う、(3)食肉を取り扱った後は十分に手を洗ってから他の食品を取り扱う、(4)食肉に触れた調理器具等は使用後洗浄・殺菌を行うことも極めて重要です。
参考 ▶ 厚生労働省 お肉はよく焼いて食べよう
▶ 東京顕微鏡院 なぜ、生食用牛レバーは禁止されたか?
● 予防法のまとめ
・よく手を洗うこと
・調理などでの二次汚染を防ぐこと意識すること
・しっかり加熱した肉を食べること
・ペットなどの管理にも注意すること
おいしい料理をたべて楽しみましょう。しかし食中毒になると大変です。皆様、気をつけておいしい料理をたべて安全に楽しみましょう!
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