2019年2月21日木曜日

麻疹はマイルドなどという蒙昧と、インフルエンザには紅茶などという無知

 ここのところ ツイッターには例によって例のごとく医療関連で馬鹿な、無知蒙昧なことを言う人がまた次々と湧いています。
 もう本当につぎつぎでどうしようもないのですね。



麻疹はマイルドな疾患などという妄言



 発信者は有名な「反ワクチン」のデマばかりのアカウントなのですが、曰く

マイルドな小児疾患である麻疹について、大騒ぎする医者…

云々などとのこと。これは論外なので無視していいのですが、ちょっと麻疹について知ったほうが良いのは事実です。

 感染症で防げる疾患のことを Vaccine preventable diseases; VPD と言います。
 麻疹(ましん、はしか、measles) は VPD の代表的な疾患であり、ワクチンで防ぐことができるんですね。

Fig.1 インスタにも投稿しました  


 そもそも麻疹とはなにか。これについては国立感染症研究所のページがとても詳しいので興味がある方は見ていただきたいです。▶ 国立感染症研究所のページ

 簡単にまとめると、麻疹は麻疹ウイルスが引き起こす感染症で、空気感染をおこしその感染力は極めて強力で、インフルエンザの数倍以上になります。

 症状としては、10~12日間の潜伏期ののちに、カタル期といって風邪にような症状、皮膚に発疹のでる時期(3~5日間)をへることが多いです。

 麻疹においては、免疫の機能をもつリンパ組織で増殖するため、免疫機能抑制状態をまねき、麻疹ウイルス以外に合併した別の細菌やウイルス等による感染症が重症化することがあり、問題となるのです。

 麻疹は発症するとたとえ栄養状態や医療がよい先進国でも1000人に1人が死に至る疾患であり、麻疹肺炎と麻疹脳炎が2大死亡原因となる。さらに、死亡することだけではなく、罹患後平均7年の期間を経て発症する亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis; SSPE)という重篤な合併症もあります。


 日本では、2000年前後の流行においても年間約20~30人が死亡していました。世界での2015年の5歳以下の小児の死亡数推計では、麻疹による死亡は全体の 1.2% に及びます。

 先に述べたように麻疹は VPD ですが特効薬などはなく、有効な予防法はワクチン接種だけです。2回のワクチン接種で麻疹の発症のリスクを最小限に抑えることが期待できるんですね。

 もし今、ワクチンをだれも打たない状況になってしまえば、麻疹の猛烈な感染力で大流行が起こることが考えられ、今の日本の人口と人の行き来を考えると1000万人とか感染するようなことも普通に考えられます。それだけで1万人は死んでしまいますね。そのぐらい、ワクチンって重要なのです。

 麻疹は、かつて平安時代ぐらいに文献に出てくる「あかもがさ」のことと思われ、長徳元年には平安京も含む大流行で政治もめちゃめちゃになっているのですね。

 江戸時代には麻疹・天然痘・水痘は「御役三病」で、特に麻疹は「命定め」と恐れられていました。江戸時代には記録上13回大流行して、文久2年(1862年)には24万人が死んでいます。24万人!

 1862年の日本の人口が約3300万人と推定されているので、全人口の 0.7%が死んでいることになりますね…。時代は戻りますが、有名どころでは徳川綱吉も麻疹で死んでいますね。

 とにかく麻疹はマイルドなんてもんじゃないんです。ワクチンが普及して、ようやく麻疹で死ぬという常識をなくし始めたら、またぞろわいてくる頭の弱い人がいるから困っちゃうよねぇ…という次第。

 今、日本では麻疹の感染が広がっています。
 読売新聞のニュース ▶ はしか患者、今年に入り167人…三重・大阪で流行
 
 そしてフィリピンでも大流行が起こっています。
 毎日新聞のニュース ▶ フィリピンではしか猛威 136人死亡、拡大懸念

 8400人の感染が確認され、136人の死亡です。致死率が高いですね。
 
 WIRED によい解説記事が出ていました。
 ▶ なぜ、はしかは危険なのか? その圧倒的な感染力と、人体への脅威となるメカニズム


 そして、日刊SPA! が踏み込んだ記事を書いています。
 ▶ はしかが関西から大流行、実は世界でも…。“反ワクチン運動”が影響か?

 現在、麻疹はアメリカでも流行しているのですが、本記事では、

米国でもワシントン州が非常事態宣言を出すなど感染拡大が報じられているが、この世界的パンデミックは、“反ワクチン運動”なるムーブメントが少なからず影響しているようなのだ。

としっかり書いています。また日本の政策についても、

日本でも、片山さつき地方創生担当相が子宮頸がんワクチンに反対するなど同調する動きも出てきている……

と、日野市の議員を応援し、「反ワクチン」の姿勢を示す政治家の存在も名指しで指摘しています。これは踏み込んだ記事になっていますが、実際にワクチンの問題はこういった面があるんですね。

 とにもかくにも、麻疹は VPD ですワクチンを打って防ぐことが重要なのですね。




立憲民主党の候補者「インフルエンザウイルスの無毒化は、紅茶が、一番です。」



 ツイッターで、あさぬま和子さんという立憲民主党の時期候補者が上記発言をしています。三井農林のリンクまで貼って…ひどいステルスマーケティングもここまで来たか…と失笑しています。

 私のブログの記事を再度リンクしておきます。
 ▶ 紅茶でインフルエンザの感染や感染拡大を防げるとのプロモーションについて
 ▶ 紅茶会社が逃げを打ち出す

 この件については一言です。「いい加減に馬鹿なことをいいなさんな」と。
 リテラシーがこのレベルの人が議員を目指すのは国にとってよろしくない。真剣にそう思います。もうどうしようもないですね。立憲民主党も。


 さて、そんなおバカばかり見つかるツイッターですが、淡々と反ワクチンのデマをつぶすことをしております。インスタグラムでも引き続きやっております。
 フォロワー数などはあまり増えず、人気も出ませんが、重要な任務と考えてぼちぼちやっております。


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