【書名】エイズの起源
【著者】ジャック・ぺパン 【訳】山本 太郎
【出版社】みすず書房
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みすず書房ホームページより (▶ ここ)
「物語の始まりは1921年頃。場所はカメルーンのサナガ川と、ベルギー領コンゴのコンゴ川流域のあいだ。登場するのはチンパンジー、狩りの獲物を売る業者、「自由女性」と呼ばれる売春婦、注射器、血漿の売人、邪悪な植民地行政官、善意に満ちた医師――そしてウイルス。ほとんどありえないことだったが、それは中部アフリカのジャングルに生息する一匹の類人猿から、帰郷しようとする1人のハイチ人に乗って海を渡り、誰に気づかれることもなく、やがてカリフォルニアのゲイバーに集う男たちにたどりついた――ウイルスの最初の旅が始まって60年後のことだった」。(『ニューヨーク・タイムズ』紙の本書紹介記事より)
エイズの原因となるHIVの広がりと起源に関する物語
後天性免疫不全症候群(Acquired immunodeficiency syndrome; AIDS) はエイズウイルス(Human immunodeficiency virus; HIV) によって引き起こされる、免疫が不全になる疾患です。そのHIVのうち、HIV-1がどこからやってきたのかをテーマに、疫学研究・データを用いてその伝播を非常に明瞭に描く。著者は医師 (熱帯医学)である。
具体的にはアフリカでHIVのもととなるウイルスがチンパンジーから人間へ、そしてその当時のアフリカの状況、人口構造、性風俗、医療行為、血液売買等、緻密でありながら様々な研究成果をわかりやすく丁寧になぞっていく。
アフリカでは、人口密度の増加をともなう都市化が急激に起こり、そこに男性労働者が流入する。そこでは当然のように性風俗が盛んとなり、辺境からやってきた性感染症 (sexual transmitted disease; STD) であるHIV-1 感染が拡大していく。そのような時に、人材流出・流入をともなう政治的混乱がおこり、より広い地域に感染が拡がる…。
ハイチへの人の移動。アフリカからハイチへ非常に大きな人の流れがあった…。さらにはハイチがアメリカ人にとっての性風俗消費の地であったこと、血液製剤が売血で行われて拡がっていった…。
HIV-1がどのように広がっていったのか、病原体がどのように広がるのかだけでなく、人間社会が公衆衛生に密接に関連していることについても非常に深く考えさせられる一冊でした。
アフリカ近年の状況や歴史も垣間見ることができる。そして人の社会と病気のかかわり、人の社会そのもののある側面も…。
内容紹介より引用
植民地政府の公文書、凍結血液サンプル、疫学、ウイルス学、分子生物学、人口統計。あらゆる証拠から謎ときパズルのピースが次々はまってゆく。ヒト社会と感染症の関係を考察する上で欠かせない一冊。
CHOICE Outstanding Academic Title賞、
2011年ラジオカナダ科学賞受賞作品。
良書、大変に強くお勧めできる。翻訳もよい。
★★★★★ (5/5)
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